フレックスタイム制での深夜業は社員の自己責任?

積まれた洋書の上に置かれたイチゴタルトのお皿。

フレックスタイム制を始めた部署で、遅い時間から仕事を始めて深夜までやっている社員が出てきた。「深夜業が当たり前」といった雰囲気になるのは避けたいし、やはり防犯上まずい。フレックスタイム制だからといって、深夜業は社員の自己責任として片づけていいものか?

 

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フレックスタイム制は、始業・終業時刻を社員本人による自主的な決定にゆだねる制度です。ですが、これは労働時間についてのみ適用があり、休憩時間・休日・深夜業については適用されません

 

とはいえ、(会社が命令していないのに)本人の都合で深夜になり、深夜労働に対する割増賃金を支払うのはちょっと疑問が・・・というのもわかります。また、頻繁に深夜のオフィスで仕事をするというのは、社員の防犯・健康面での安全が心配です。

 

そこで今回は、フレックスタイム制における深夜業の取扱いについて、詳しく確認していきたいと思います。

フレックスタイム制における深夜業

金色のトレイにのったコーヒーの入ったマグカップ。紙に包まれたユーカリの小枝たち。

フレックスタイム制では、コアタイム以外の時間帯については、社員が始業・終業の時刻を自由に選択できることが前提です。

そのため、会社がわざわざ「深夜時間帯に仕事すること」と命じていないのに、社員が自分の判断で(勝手に)深夜業を行う・・・といった事態が起こりうるのは否定できません。

 

とはいえ、冒頭でもお伝えしたように、社員の自己選択によって労基法上の深夜業にあたる時間(午後10時から午前5時)に働いたとしても、フレックスタイム制において深夜業は適用除外とはなりません

 

深夜業の取扱いとなるので、その時間に働いた分については、通常の労働時間の賃金額の2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません

 

そこで、会社が命令していない(というより命令できない)深夜時間帯の労働に対して割増賃金を支払うことになるのは、納得できないし、制度として不都合ではないか?という問題があります。

 

また、深夜労働については、深夜業に従事する女性社員の就業環境等を整備するよう、厚労省より指針が示されています。

内容は次のようなものです。

  • 会社は、通勤及び業務の遂行の際における防犯面での安全の確保に努めること
  • 防犯上の観点から、深夜業に従事する女性社員がひとりで作業することを避けるよう努めること
  • 育児や家族の介護等に関する事情に配慮する等適切な措置を講じることが必要

必要のない深夜業を防ぐには

オフィスの打ち合わせテーブル。オレンジ色のバラの花が飾られたガラスの花瓶。

前段でお伝えした厚労省の指針により、深夜労働を女性社員が行っていることを知りながら、「フレックスタイム制だから本人の自由意思だ」などとして、会社が中止させるなどの措置をとっていないというのは問題となります。

 

また、会社の承認なく深夜に働いた場合、たとえ仕事上のやむを得ない必要性があったとしても、「勝手に深夜に仕事したのだから」ということで割増賃金を支払わない・・・のは問題ないのでしょうか?

 

そこで、このような問題ある結果とならないよう、会社は就業規則において、フレックスタイム社員に対して次のような旨を示しておくことがポイントとなります

  • フレックスタイム社員であっても、深夜業にあたる時間帯に仕事をしないこと
  • やむを得ず、深夜業を行わなければならない仕事上の必要性が発生したときは、上司に申し出て承認・許可を得ること
  • 正当な理由なく会社の許可・承認なく深夜業を行ったとしても深夜割増賃金は支払わないこと(※会社が明白に禁止し、深夜労働をする場合の手続きも定めているのに、正当な理由なく深夜労働をしても、それは会社の指示に反する労働となるから)

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フレックスタイム制が円滑に機能する条件のひとつに、仕事の裁量度を高めることがあります。だからといって、仕事上の必要性がないのに、むやみに深夜労働が増えてしまっては本末転倒です。就業規則に定めた内容を、社員としっかり共有しておきたいところです。

 

それとともに、社員に対する人事評価の評価基準を、時間生産性に関連したものへとシフトしていくことも必要だと思います。

朝露に濡れたピンク色と白色のトルコキキョウの花たち。

社会保険労務士高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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