社員が裁判員で休むとき年休扱いにしてもいいですか

テーブルに無造作に置かれた白のバラとピンクのチューリップ。コーヒーの入った白のカップ&ソーサ。パソコンのキーボード。スマートフォン。マウス。電卓。イヤフォン。

「社員が裁判員として裁判に参加しないといけない場合、年次有給休暇を取得する扱いにしてはダメでしょうか?」

 

会社には、年10日以上の年次有給休暇が付与される社員に対して、年休日数のうち年5日の年休を取得させることが義務付けられています。そのため、「積極的に年休を消化させたい」ということで、先のようなご質問をコンサルティングのなかでいただくことがあります。

 

裁判員の仕事は、国民に課せられた公の職務にあたります。

よって労基法の定めるところにより、その職務を全うするために必要な時間について、会社は社員の労働を公民権行使の保障として免除しなければなりません

 

とはいえ、会社として有給の休暇とする必要があるかは別の問題です。

そこで今回は、社員が裁判員として裁判に参加するとき、年休との兼ね合いを会社としてどう扱うべきなのか、確認していきたいと思います。

裁判員で休むとき年休の扱いはどうなる

卓上カレンダーの前に置かれた眼鏡と置時計。

裁判員休暇を考えるにあたって、まず裁判員制度とは、裁判員法に基づき原則として裁判員6人と裁判官3人が、合議体を構成して刑事事件の審理及び裁判を行うことをいいます。

 

先にお伝えしたように裁判員の仕事は、法律上公の職務にあたるので、会社としてはその職務に必要な日数を社員に付与しなければなりません

 

言い換えると、会社としては社員が裁判員制度に関する仕事を行うにあたって、労働義務を免除する(裁判員休暇を与える)義務があるということです。ただし、裁判員休暇を有給扱いとすることまでは義務づけられていません

 

裁判員の仕事のため会社を休む日について、会社から「年次有給休暇にしなさい」と命じたり、そうすることを勧奨したりすることは、労基法による年休の自由取得の原則に違反するのでできません

 

法定の年次有給休暇については厳格な規制があり、原則として社員が「いついつに年休をとりたい」旨の意思表示によって、取得事由を問わず休暇が成立するからです(ただし、会社に時季変更権があります)。

 

とはいえ、社員自身の希望で裁判員の職務遂行について、年休をもってこれに充てることは、年休取得事由の自由の観点からみて差し支えありません。また、裁判員として仕事を休んだことを理由に、解雇などの不利益な扱いをすることは裁判法で禁止されています

実務上のあるある疑問

木製のテーブルに置かれたノートパソコン。手帳とスマートフォン。ボールペン。観葉植物の鉢植え。コーヒーの入ったマグカップ。

裁判員法では、何人も、裁判員や裁判員候補者等の氏名,住所その他の個人を特定するに足りる情報を公にしてはならないとされています。

そうすると、「社員が裁判員の仕事で会社を休むときに、自分が裁判員であることを会社に報告したりするのはダメなのか?」との疑問が浮かんできます。

 

これについて、「公にする」とは、そのような情報を不特定又は多数人の知り得る状態に置くことをいうので、裁判員である社員が休暇の取得のため、自分が裁判員であることを会社の上司に話したとしても、この規定に違反するものではないと考えられています。

 

また、裁判員である社員が年休をとって裁判に参加した場合、「日当と給料の両方を受け取ってもいいのか?」との疑問があるかもしれませんが、そもそも日当は所得保障ではないので問題はありません

 

なお、給与額から裁判員の日当を差し引くことは一般的に認められませんが、1日分に相当する給与額と日当相当額との差額を支給するような特別の有給休暇制度にすることは問題ないとされています。

 

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裁判員制度と年休の兼ね合いは以上のようになりますが、審理には1日だけでなく複数の日数を要します。前述のように、裁判員には日当が裁判所から支給されますが、それは所得保障ではなく、裁判員の仕事のために生じる損害(裁判所に行くための諸雑費、一時保育料の出費など)の一部を補償するものです。

 

裁判員の仕事のため社員が一定の期間不在となることについて、特別休暇を与える等の措置を検討することも必要でしょう。

木製のテーブルに無造作に置かれたピンクのチューリップとカーネーション。「ありがとう」と英語で書かれた手書きのメッセージカード。

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■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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