入社時の身元保証契約でどんな責任が問われますか

パソコンのキーボードの前に置かれた紺色の封筒。お菓子入り。広げられたリングノートとボールペン。観葉植物のグリーン。

うちの会社では、入社時に身元保証契約書の提出を求めることになっています。最近入った新入社員から「身元保証契約にサインするとどんな責任がかかるのですか?」と質問されました。身元保証契約書の提出は、当たり前の“しきたり”になっていたので、これまで深く考えたことがなかったなあ・・・(メーカー勤務6年 人事担当 談)

 

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身元保証契約は、社員本人との契約ではなく、身元保証人と会社との契約です。

(冒頭の質問も、社員を介した、身元保証の依頼を受けた人からのものと考えられますね)

その目的は、簡単にいうと、社員が会社に損害を与えた場合にそれを賠償することにあります。そのため、社員に身元保証契約書の提出を求める企業は多いと思います。

 

とはいえ、「どこまで責任が問われるのか?」と聞かれると、冒頭のように答えに窮する場面もあるのではないでしょうか。

そこで今回は、採用時に社員に求める身元保証契約とはどんなもので、それによってどんな責任が発生するのかについて、詳しく確認していきたいと思います。

契約関係はどうなる?

ガラスの花びんに活けられた大輪のピンクのバラ。積まれた手帳のうえに置かれたスマホとボールペン。

身元保証契約は、会社と(社員から身元保証を依頼された)身元保証人との間で、社員本人の行為によって会社が受ける損害の賠償を約束する契約をいいます。つまり、会社と身元保証人との間で行われるものであって、社員本人は契約関係の当事者になりません

 

そのため入社後、社員が会社の命令によって出向し、出向先の会社で横領等の不法行為をはたらいて出向先に損害を与えた場合も、出向先の会社とは契約関係にないので、原則として責任を負わないとの旨が裁判例でも示されています。

 

なお、単に金銭的な損害を賠償するだけでなく、本人が誠実に勤務するよう尽力し、会社に迷惑をかけるなど損害が拡大しないように、病気(特にメンタル疾患)になった場合には身柄を引き取るなど、身元引受としての性質(身元引受契約)を含む場合もあります

(この場合「本人の身元を引受、本人の指導監督に努め、万が一疾病等によって会社に損害や迷惑をかける場合には賠償及び身柄の引取や看護など適切な措置をとることを保証する」といった旨の身元引受契約が必要です)。

どこまで責任が問われる?

木目調のデスクの上に置かれたノートパソコン、ボールペン、リーディンググラス、コーヒーの入った白のマグカップ。

前段でお伝えした身元引受契約では、たとえば、社員が病気であることを自認していない状態で、家族も非協力的であるときには、身元引受人としての保証を求められるケースもあります。

 

ですが身元保証契約では、普通はそこまでの責任を約束するものではありません。単に、社員の故意または重大な過失によって損害を与えた場合には賠償する、という金銭的な賠償が求められるのが一般的です。

 

この金銭的な賠償について、たとえ「一切の損害の賠償」と契約で定めていても、法律による身元保証の性質上、原則として会社はそこまで責任を問うことはできません

横領、窃盗といった犯罪行為にあたるような故意による損害の場合は別ですが、過失による損害については、全額の賠償のケースは少なく、7割から2割の範囲で賠償が命じられる裁判例が多いようです(運転業務上の相当な過失による交通事故等の場合)。

 

なお、身元保証の契約期間は5年を超えることはできず、期間を定めていないときは3年に限り有効とされています。また、この契約期間は自動更新することはできません。期間の満了時に更新手続きをしなければならないことになっています。

 

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意欲ある働き手を確保できるかどうかは、将来的な企業の競争力に関わってくるので、戦略的に採用管理を行う企業は多いと思います。

 

ただ、募集と選考に尽力するあまり、採用してから(入社後)の手続きフロー(新入社員との諸々の書類のやりとりなど)の整備が手薄になり、毎回手間取る・・・というお話をよく伺います。新入社員のほうも緊張しているのでなおさらですよね(詳しくは下記の関連記事をどうぞ)。

 

提出書類にまつわる質問から、新入社員とぎくしゃくしてしまうのは避けたいですから、この記事をきっかけに確認の機会にしていただければと思います。

バラとカスミソウのブーケ。シールで封がされたレター。

社会保険労務士高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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社員を伸ばす人事制度構築コンサルティング。ノートパソコンのキーボードに打ち込む社員の指先。

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