妊娠した社員への配慮とプライバシーのバランスをどう考える?

ハッピーバースデイの文字のろうそくとバースデイケーキ。ティーポット。マカロン。カップケーキ。花びんに活けられたパステルカラーのはなたち。

営業部のAさん、最近、具合が悪そうだ。妊娠のためなら、会社として配慮が必要だ。でも、本人からの申出はない。本人の体調が心配だといっても、Aさんは女性だし、プライベートにどこまで立ち入っていいのか?(セクハラと思われないだろうか?)。とはいえ、会社には社員に対する安全配慮義務があるはず。いったい会社として、どんな対応をすればいいのか・・・。

 

**

人事部員のBさん(男性)が、他部署のAさん(女性)の体調不良に気付きました。人事部員としての仕事に勤勉で真面目で誠実に向き合うほど、会社としての安全配慮義務と社員のプライバシーとの兼ね合いは悩ましい問題となります。

 

法律的には、妊娠中又は出産後1年を経過していない女性社員が、医師等から健康診査に基づいた指導を受け、この指導事項を守るための措置について申出をした場合、会社は申出に応じて勤務時間の変更、勤務の軽減等の必要な措置を講じなければなりません

・・・とすると、冒頭のような場合は、妊娠した社員への配慮とプライバシーのバランスをどう考えればよいのでしょうか。さっそく詳しく確認してきたいと思います。

会社の安全配慮義務とは

メモ帳とゴールドのボールペン。ヒメヒマワリの花。マグカップ。

結論からお伝えすると、安全配慮義務とは、企業としての物的・人的支配管理責任のことをいいます。

つまり、会社は社員を採用すると特別なとりきめを行わなくても、労働契約に付随する義務として「物理的にも身体的にも安全衛生上の管理を尽くして労働災害の危険から社員を保護して働かせます」ということも約束したことになります(安全衛生法や労基法を守って社員を雇用する義務があることは大前提です)。

 

逆にいうと、会社の支配管理下にない場合には、会社に安全配慮義務は及ばないとされています。では、どんな場合に会社に安全配慮義務が発生するのかというと、社員の職種、仕事内容、仕事を行う場所など、当事者(会社と社員)の置かれた状況によって異なります。その具体的な内容は、下記のような観点から判断されることになります。

  1. 社員が労務を提供する過程から、会社は社員の生命及び身体に対して危険が発生することを予見できていたか、または予見できる危険性の内容や程度はどんなものか?
  2. その危険性から社員の生命及び身体を保護し、事故を防止するために必要とされる措置とはどんなものか?
  3. 信義則上、会社側にどんな内容の措置をとるべき義務として負わせるのが妥当なのか?

会社としてどのような対応をとるべきか

リングノート。カーネーションとミモザのブーケ。

冒頭でお伝えしたように、母性健康管理に関する措置について、社員からその旨の申出を受けた場合には、会社の社員に対する安全配慮義務の一環として医師等と連絡をとって、申出に対応する措置をとらなければならないことが法律で定められています。

 

この法律の規定を根拠とする申出を受けながら、会社として対応する措置をとらなかったために、もしも母子に健康障害等が発生すると、安全義務違反として損害賠償責任を問われることもあり得るでしょう。

 

ただ難しいのは、妊娠といったことは女性社員のプライバシーに関わるということです。そのため、会社としては本人からの申出がないのに措置をとるわけにはいきません

 

そこで、会社が母性健康管理において必要な措置を適切に講じるために、厚生労働省では「母性健康管理指導事項連絡カード」(厚生労働省で様式を例示)を利用することを指導しています。医師等の指導事項の内容が会社側に的確に伝達され、かつ(会社が本人に対して)取るべき措置の内容が明確に示されることが大切だからです。

 

本人のプライバシーを守るため、女性社員がこの連絡カードを提出してこないとき(連絡カードでなくても本人からの申出がないとき)は、たとえ本人の妊娠がわかっていたとしても、会社は人事部(社員の健康管理担当)や上司(本人の所属する部署)に対して、「〇〇さん、体調悪そうだけど勤務軽減措置の申出ないんだよね」など、口出し(うわさ話など)すべきではありません。

 

そのため、結果的に健康障害が本人に発生したとしても、会社には安全配慮義務違反は成立しないと解釈されています。勤務時間の変更、勤務の軽減などの保健措置の請求は、女性社員の申出にまかせられているからであり、プライバシー保護のため会社が立ち入ることのできないやむを得ない境界線だといえます。

 

**

自分の力をフルにつかって、やりたい仕事をやり、人生を充実させていくためにも、自分の体調をきちんと理解し、主治医等と相談しながら、適切な健康管理を行っていくのはとても大切なことです。

 

母性健康管理に関する措置は、本人からの申出により利用できるようになっている制度ですから、主治医等から指導を受けたときにはいつでも会社に申し出るよう、会社として普段から職場で周知を行っておきたいですね。

ラナンキュラスやデイジーのブーケ。赤いリボンがかけられたギフトボックス。for youのメッセージカード。

社会保険労務士高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

≫詳しいプロフィールはこちらから

伸びる会社の就業規則作成コンサルティング。ノートパソコン、ペン、スマホ、ピンクの付箋。
社員を伸ばす人事制度構築コンサルティング。ノートパソコンのキーボードに打ち込む社員の指先。

無料コンテンツ。ピンクを基調としたノート、ペン、クリップ、コーヒーの入ったカップ&ソーサ。
社会保険労務士高島あゆみへのご依頼はこちらからどうぞ。

「トップページにもどる」ボタン

【社労士事務所Extension】

社会保険労務士 高島 あゆみ

〒542-0082 大阪市中央区島之内1-13-28 ユラヌス21ビル1F