当日の電話での年休請求をどう取り扱う?

デスクの置かれたレトロなオレンジ色の電話。ノートパソコン、スマホ、メモ帳、えんぴつ、紅茶の入ったカップ&ソーサ、観葉植物の鉢植え。

始業時刻前の職場に「今日は休ませてください」と電話があったときに、年休をどう取り扱えばいいのか困惑する、というお話をコンサルティングのなかでよく伺います。

 

実は、法定の年次有給休暇の取得は、「この日に休暇をとりたい」いう社員の意思表示だけで成立します(会社の時季変更権の行使を解除条件としています)。年休日を決めてその旨を伝えさえすれば、会社からの承認は必要ない、ということです。

 

言い換えると、会社の時季変更権の行使がない限り、社員はそのまま休んでもよいことになります。当日は、労働義務の免除という法的な効果が生じ、適法な休暇として成立します。

ただし、このように法律で決められた社員の権利を主張できるのは、あくまでも事前に年休申請があったときの話です。

 

そこで問題になるのは、当日の朝になって「年休をとりたい」と電話があった場合です。当日の申請は、法的には事前申請ではなく事後申請になるからです。今回は、当日の朝になって「休みたい」との電話があったとき、年休の取扱いをどうすればよいかをみていきましょう。

事前申請と事後申請の違いとは

パソコンのキーボードの上に置かれたスマートウォッチ。

まず、当日の朝の電話での年休請求がなぜ「事後申請」となるかを確認していきましょう。

 

法律で定められた年休は、原則として「1労働日」単位に付与されるものです。時間単位年休にしても、1労働日を分割して付与するということなので、基本的には「労働日」単位です。

 

1労働日というのは、通常は暦日計算によるものとされています。つまり、午前0時から午後12時までの24時間をもって、1労働日の休暇となります。

 

よって、当日の朝になって「今日年休をとって休みたい」との申し出の電話が本人から会社にあったとき、たとえそれが始業時刻前であっても、すでに当日の午前0時を過ぎていることには変わりません。その日の「1労働日」はすでに進行しています。よって、これは事前申請ではなく、事後の年休請求ということになります。

事前とは前日の終業時刻より以前、ということです。少なくとも年休日当日の午前0時以降の請求は事後請求となります。

年休の事後振替は就業規則による

ノートパソコンの上に置かれた書籍と黒ぶちの眼鏡。

冒頭でもお伝えしたとおり、労基法では、社員の年休日が会社の時季変更権の行使のないことを解除条件に成立することが定められています。ですが、事前の場合とはちがって事後申請の場合、当然には適用とはなりません

 

法律的には、「時期に遅れた請求」ということで事後請求になります。そのため、会社は事後的な年休への振り替え充当を行うべきなのか?という問題が発生します。

 

結論からお伝えすると、事後振替による年休の充当を認めるかどうかは会社の自由です。このような当日の年休請求を認めることにしてもいいですし、一切認めないという取扱いでも違法ではありません。

 

いずれにしても、就業規則ではっきりと定めておく必要があります。ただし、就業規則のうえでは認めないとしていても、上司がこれを認める取扱いを行い、これが繰り返し継続していて、労働慣行となっている場合には注意が必要です。就業規則にどう定めていようと、当日の年休振替を認めなければならないこともあります。

 

なお、「(社員の)請求により欠勤を年休に振り替えることができる」とだけ就業規則に書かれていると、「年休の事後振替は社員の当然の権利だ」と、社員に誤解を与えるおそれがあります。

 

一般的に年休の事後振替を認めているケースは多いと思いますが、基本的には急病、突然の体調不良といった事態を想定しているものでしょう。あくまでも、「事後振替の承認は会社の裁量によるものであって、必ず行われるものではない」旨を記載し、社員の自覚を促したいところですね。

 

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欠勤があまりに多く、欠勤後の年休への事後振替が当たり前になっている社員については、特に対応を考える必要があります。本人の健康状態も心配(職務に従事できる心身の状態なのか?)ですし、ひょっとすると病気のふりをしている(職場の人間関係や仕事で何かトラブルを抱えているのか、それとも本人の怠慢なのか?)のかもしれません。

 

そんなとき実務的には、事後振替を認めない医師の診断書の提出を求める、などの対処が考えられます。ただ、前述のように何らかの事情を抱えているのかもしれませんから、本人から事情を聴き、また直属の上司から日ごろの勤務態度の報告を受けたうえで、冷静に対応したいですね。

オフィスのテーブルで資料を広げて打ち合わせ中の3人のビジネスマン。コーヒーの入ったマグカップ。

社会保険労務士高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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