「社員が時間単位年休を取得すると、年休の残日数をどんなかんじで年休管理簿に記録していくといいのかな?(+_+)」(人事担当者談)
新型コロナウィルスの影響もあり、職場での柔軟な働き方を検討していかなければならない状況です。取得状況の記録がややこしいから、という理由で時間単位年休の導入をためらうなら勿体ないと思います。
たしかに、職場に時間単位年休制度を採り入れた場合、年休管理の記録簿の取扱いは、今までのように「年度当初の残日数-取得日数=残日数」というわけにはいきません。
日単位での取得分と時間単位での取得分が入り混じることで従来のように単純ではなくなるので注意を払う必要があります。
そこで今回は、時間単位と日単位年休の管理をどのように管理するといいのか、詳しく確認していきたいと思います。
まず気を付けるべきポイント
時間単位年休を含んだ年休の取得記録で、まず気を付けるべきポイントを押さえましょう。それは、年度当初においては、時間単位年休と日単位年休を別々に分けて管理してはいけない、ということです。具体的に例をみてみましょう。
【前 提】
- 職場の所定労働時間は1日8時間
- 時間単位年休は5日間として労使協定が結ばれている
- 年度当初の年休の残日数は20日で、そのうち5日が時間単位分
【Goodの記録】
年度当初の年休残日数 | 20(5)日 (カッコ内はうち時間単位分) |
【Badの記録】
年度当初の年休残日数 | 日単位分:15日 |
時間単位分:5日 |
※初めから時間単位年休と日単位年休を別々に分けて管理しているのがダメ。
なぜなら、時間単位年休は、社員が時間単位で年休を取得したいと申し出たときに、(本来なら日単位でしか年休を付与できないところを)労使協定によって、時間単位で年次有給休暇を与えることができるというものだからです。
つまり、それぞれの社員に対して時間単位による取得を義務付けるものではないということです。時間単位で年休をとってもいいし、とらなくてもいい。あくまで、時間単位で取得するか、日単位で取得するかは、社員それぞれの意思によることになります。
時間単位による取得を義務付けるものではないので、はじめから時間単位分と日単位分というふうに分けるのはダメだということです。
実務的にはどうなる?
年度初めの記録管理は前段のとおりですが、その年度がスタートして、日単位や時間単位年休の取得があったとき、どのようにしていけばいいのでしょうか。
もちろん年休取得の管理簿上は、日単位年休と時間単位年休の両方を一括して記録していくことになります。
時間単位で年休の取得があったときには、日単位年休を時間単位年休の方に取り崩していく方法で管理し、記録していくことになります。
図で示すと下記のようになります(前提は前段と同じ)。
取得 | 残日数 | (取り崩した日単位年休の)残時間 | ||
日単位 | 時間単位 | 日(うち時間単位分) | ||
年度当初 | (日) | (時間) | 20(5)日 | (時間) |
4月10日 ※1日取得 |
1 | ― | 19(5)日 | ― |
5月25日 ※3時間取得 |
3 | 18(4) | 5 | |
6月2日 ※2時間取得 |
2 | 18(4) | 3 | |
7月24日 ※3日取得 |
3 | ― | 15(4) | 3 |
その年度中に取得されなかった年次有給休暇の残日数・時間数は、次年度に繰り越されることになります。ただし、次年度の時間単位年休の日数は、前年度からの繰り越し分も含めて5日の範囲内です。
年5日の時間単位年休を使い切り、最後に1日未満の端数が残った場合は、
- 翌年に繰り越す
- 端数を日単位に切り上げて1日として与える
などの対応が考えられます。
たとえば、年度末に残った年休が3日と3時間だったとします。次年度の付与日数が11日だとすれば、次年度は11日+3日3時間=14時間3時間でスタートすることになります(上記1の取扱い)。3時間の端数の管理がややこしいので、これを1日に切り上げて11日+4日=15日でスタートする、というのが上記2の取扱いです。
このように時間単位年休の残時間が繰り越されたときは、次年度の取扱いに注意が必要です。
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「半端な繰り越し分を含めて時間単位年休は最大5日分まで」ということなので、個人的には、端数を1日に切り上げて付与するほうが、記録管理が煩雑にならなくて済むのではないかと思います。
半端な繰り越し分を管理することでカウントミスするのを避けるためです。
コンサルティングでこうお伝えすると、「会社のほうが泣くということですね・・・」と伺うことがあります。そういう見方もできるかもしれませんが、会社として事務管理のミスは可能な限り避けなければなりません。
ある程度の割り切りも必要でしょう。
よって、「割り切り」と「年休管理の事務負担」とのバランスを考えて、実務上どちらを採用するかを決めることになります。
では、社員さんが時間単位年休を取得したときの記録管理について、スッキリ整理できましたでしょうか?
職場の柔軟なワークスタイルについて、選択肢のひとつが増えることを応援しています!
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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