![テーブルにカーネーションの花たち。生クリームやチェリー、砂糖菓子があしらわれたケーキ。退職のお祝い。](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=535x1024:format=png/path/s6f1e3f4dce7a8c9c/image/ie9ff59824a85e2e8/version/1712812252/%E3%83%86%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%AB%E3%81%AB%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%8D%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%81%AE%E8%8A%B1%E3%81%9F%E3%81%A1-%E7%94%9F%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%84%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%AA%E3%83%BC-%E7%A0%82%E7%B3%96%E8%8F%93%E5%AD%90%E3%81%8C%E3%81%82%E3%81%97%E3%82%89%E3%82%8F%E3%82%8C%E3%81%9F%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%82%AD-%E9%80%80%E8%81%B7%E3%81%AE%E3%81%8A%E7%A5%9D%E3%81%84.png)
春といえば旅立ちのシーズンですが、年休の日数がたくさん残っている社員が年度末に退職することになったとします。
年度末の忙しさで退職前に年休をとることができなかった場合、その社員の年休請求権はどうなるのでしょうか。
年休は原則として社員の希望通りに与えなければなりませんが、退職予定者の場合には、年休の残日数があっても退職日を迎えると行使することができません。
退職予定の社員には「年休申請があっても年休を与えなくてもいいのでは?」と思われることもあるかもしれません(←ちゃんと理由があるので後述しますね)が、法律面をクリアにしておきたいですよね。
そこで今回は、退職予定者の年休請求について会社がとるべきについて、詳しく確認していきたいと思います。
退職予定者の年休請求を認めなくてもいいか
![お皿に盛り付けられたさくらんぼ。ミルクピッチャーとコーヒーの入ったカップ&ソーサ。](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=535x1024:format=png/path/s6f1e3f4dce7a8c9c/image/i2b396b4e898f1e27/version/1712843016/%E3%81%8A%E7%9A%BF%E3%81%AB%E7%9B%9B%E3%82%8A%E4%BB%98%E3%81%91%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%9F%E3%81%95%E3%81%8F%E3%82%89%E3%82%93%E3%81%BC-%E3%83%9F%E3%83%AB%E3%82%AF%E3%83%94%E3%83%83%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%81%A8%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%92%E3%83%BC%E3%81%AE%E5%85%A5%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%82%AB%E3%83%83%E3%83%97-%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%82%B5.png)
社員がもつ年次有給休暇の請求権は、法律上は労働義務の免除を求める権利のことです。労働義務のある日、つまり営業日についてのみ認められるものです。
したがって、社員が退職して会社との労働契約の関係が終了すれば、会社に対して労働義務の免除を求める根拠はありません。
そもそも「会社と社員」という関係が消滅するのですから、その関係の存続を前提とする年休の請求権も消滅することになります。
言い換えると、退職予定者に年休の残日数があっても、退職してしまえば行使できないということです。
そのせいもあってか、たとえば社員の退職日が3月31日に予定されていて、年休の日数が20日残っている。実際に出勤するのは3月初めまでで、あとは退職日まで残りの年休を消化すべく連続して休む・・・といったケースは、しばしばオフィスではみられるのではないでしょうか。
そこで、「退職することが予定されている社員には、年休取得の請求があっても認めなくてもいいのでは?」と思われる上司・同僚・後輩(つまり残される社員ですね)は少なくないかもしれません。
それは、「会社を辞めるのだから、年休取得によって心身をリフレッシュさせて会社の事業、所属するチームに貢献させる必要性はもはやない」「退職前に残っている年休を完全消化させるというのは、本当に休みが必要だから取得するのではない」といった、退職を前提とする年休の請求は年休請求権の濫用であり、会社組織に対する信義則に反する、との見方によるものです。
会社のとるべき実務的な対応は
![ノートの上にコーヒーの入ったカップ&ソーサが乗せられている。](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=535x1024:format=png/path/s6f1e3f4dce7a8c9c/image/ib358be972ca89766/version/1712843016/%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%88%E3%81%AE%E4%B8%8A%E3%81%AB%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%92%E3%83%BC%E3%81%AE%E5%85%A5%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%82%AB%E3%83%83%E3%83%97-%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%82%B5%E3%81%8C%E4%B9%97%E3%81%9B%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B.png)
前段末のような意見に頷ける部分もありますが、労基法では「年休は原則として社員の希望どおりに与えなければならない」としています。例外的に「事業の正常な運営」を妨げる事由がある場合には時季変更権の行使によって拒むことができるだけです。
時季変更権を行使するには、変更して与える他の日がなければなりませんので、退職日を超えて時季の変更を行うわけにはいきません。
では、社員が自己都合で退職するとき、会社が時季変更権を行使する余地のない日を退職日に指定することはできるのでしょうか。
これについて、「社員の決めた退職日の都合で会社の時季変更権が制約されることは正当ではないため、退職願いの提出後14日間いつも通りの勤務を続けることを定めて、年休の取得が結果的に制約されるケースは違法ではない」とする判例もあります。
「そういった事態を避けるために、年休の計画付与をすればいいのでは?」
こんな意見もあるかもしれません。それはもっともなのですが、計画的付与は、計画的に付与する日は労働日であることが前提です。その計画された日より前に退職することが予定されている社員については、退職後を付与日とする計画的付与はできません。このような場合、計画的付与前の年休の請求を拒否することはできないことになります。
会社として、退職日を控えてやめる社員も、残される周りの社員も困らないようにするためにどう対応すればよいのでしょうか。
最近の「労働時間の短縮」「年休取得の促進」という流れに反するので、本来は好ましいことではありませんが、退職時に年休の残日数を買い上げることとして、本人に納得してもらう方法もあります(退職で消滅する年休日数を会社が任意に買い上げることは労基法違反にあたりません)。
ですが、やはり優先して取り組みたいのは、
- 退職前に残っている年休を完全消化させようとするのは、「本当に休みが必要だから取得する」ことからは遠く、本来の年休取得の趣旨に反する。
- 引継ぎがないまま休暇に入られると、残された人に過度の負担をかけることになってしまうので、できる限りの誠意をもって対応してほしい。
これらを伝えたうえで、本人の納得を得たうえで年休を調整することです。
仕事の引継ぎに必要な分、退職日をずらすことができないか、本人と話し合うことも必要になってくるかもしれません。
新しい門出はやはり心から祝福して応援したいもの。
退職前の年休取得にまつわる問題でごたごたすることのないよう、感情的にならず冷静に対応したいですね。
![ガラス鉢いっぱいに盛り付けられた砂糖菓子とピンク色のリボン。](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=443x10000:format=png/path/s6f1e3f4dce7a8c9c/image/ie4cd5e9a8d178206/version/1712733690/%E3%82%AC%E3%83%A9%E3%82%B9%E9%89%A2%E3%81%84%E3%81%A3%E3%81%B1%E3%81%84%E3%81%AB%E7%9B%9B%E3%82%8A%E4%BB%98%E3%81%91%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%9F%E7%A0%82%E7%B3%96%E8%8F%93%E5%AD%90%E3%81%A8%E3%83%94%E3%83%B3%E3%82%AF%E8%89%B2%E3%81%AE%E3%83%AA%E3%83%9C%E3%83%B3.png)
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■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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