列車の遅れや運休で会社の始業時刻を遅らせてもいいですか

青空のもとの電車の車両。駅に停車。

台風の影響などで悪天候になると、列車やバスが遅れたり、運休になることもあります。それが平日のことなら、必然的に仕事の予定も変更せざるを得ません。

 

「公共交通機関の遅延で、始業時刻からだいぶ経ってからでないと、社員がオフィスに出勤できないこともあります。

かといって仕事の納期が迫っている場合もあるので、そんなときは始業・終業時刻を後ろにずらせないのでしょうか?うちではフレックスタイム制をとっていないのでダメでしょうか?

 

コンサルティングでこんなご相談をいただくこともあります。

このような、いわゆる就業時間帯の繰上げ・繰下げは、変形労働時間制やフレックスタイム制にはあたりません就業規則に規定することで、実施することができます

 

そこで今回は、就業時間帯の繰上げ・繰下げとはどういったものなのか、詳しくみていくことにしましょう。

始業・終業時刻とはどんなもの?

レトロな目覚まし時計。

そもそも会社における始業・終業時刻とは、法律的にみてどんなものなのでしょうか。

 

まず、労基法が規制する労働時間は、「実労働時間制」をとっています。会社の直接的な指揮命令のもとで実際に働いた時間を、労働時間としてカウントする、ということです。

 

社員の遅刻や早退、私用の外出など、会社の監督から離れて就労しなかった時間があるときには、これらを除いてカウントし、1日8時間以内かつ1週40時間以内であれば適法です。

 

つまり労基法では、たとえば「1日7時間労働の約束のところを8時間労働させた」といった契約外の労働をさせることを罰し、禁止しているのではありません。「実労働時間が1週40時間、1日8時間を(36協定の締結がないのに)超えて労働させること」を罰し、禁止しているのです。

 

ところで各企業では、必ずしもこのような実労働時間制をとっていません。始業・終業時刻を就業規則に定める形式主義をとる場合も多くあります。定めた始業・終業時刻を基準として、残業時間(時間外労働)をカウントしています。

 

この場合では、たとえある社員が午後から早退して、結果として5時間ぐらいしか働かなかったとしても、始業時刻より以前に会社からの命令によって働いていたときには、「早出残業」としています。終業時刻についても同様で、たとえ私用で午前半休をとり、結果として6時間しか働いていなくても、終業時刻を超えて働いた分を「残業」としています。

 

つまり、当日の実労働時間の長短にかかわらず、始業時刻より以前に、もしくは終業時刻を超えて働いた分を「残業時間」としてカウントし、残業代を支払うというものです。

 

このような取り扱いは、法律上のものではなく、法律を上回るその会社独自のものといえます。

労働時間の繰上げと繰下げ

女性の通勤カバン。スマホ、手帳、スマホ。

前段のとおり、労基法は「実労働時間主義」をとっているので、始業・終業時刻の繰上げ・繰下げは会社の自由です。

結果的に1日8時間、1週40時間を超えない限り、労基法上の時間外労働時間にはあたりません。

 

とはいえ、社員に会社の繰上げ・繰下げ命令に従う義務が発生するためには、労働契約上の根拠がなければなりません。この労働時間の繰上げ・繰下げについて、就業規則に規定しておくことが必要になります。

 

また、この繰上げ・繰下げの労働時間の変更は、オフィス全体で実施する必要はなく、それぞれ社員ごとにも実施できます。

 

冒頭の例のように、悪天候による公共交通機関の遅延があったとき、たとえば始業時刻より1時間遅れて出勤してきた者に対し、その日の終業時刻を1時間遅く設定することにより、本来の終業時刻後1時間の労働を時間外労働の扱いとすることなく、8時間労働させることが可能になります。

なお、就業規則に「業務の必要上、始業・終業時刻を繰上げまたは繰下げることができる」と、抽象的な定め方でも有効ですが、どういった場合に労働時間の繰上げ・繰下げが実施されるのか、できるだけその事由を書いておくことが望ましいと思います。

 

まったく予想もしないときに繰上げ・繰下げが行われるのではないか?と、社員に不安感を抱かせないようにするためです。

具体的には、天災事変、交通ストなどの場合のほか、業務上の必要に応じて繰上げ・繰下げが可能であることを明記しておくとよいでしょう。

 

「労働時間の繰上げ・繰下げは、あくまで仕事を滞りなく進めるためのひとつの手段である」と伝えることが、社員のいらぬ誤解を回避するポイントになります。

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社会保険労務士高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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