新入社員を子会社へ出向させるのはダメですか

浜辺の貝殻。砂にSummer recruitment activities!の文字。

いまは、求職者が有利な売り手市場なので、内定を辞退する学生もみられるようです。予定の採用人数を集めるために、夏採用というかたちで8月下旬ごろまで採用活動を続ける企業もあるようです。

そこで、次のようなご質問をいただくこともあります。

 

「うちの子会社は、就活生の知名度がないために採用活動で苦戦している。子会社の名前で求人をしても人材の獲得が難しいので、親会社である当社で募集して、採用してからすぐに子会社へ出向させるのは、何か問題がありますか?」

 

業績はよいのに学生の間では知られていない、といったこのような現象は、特にBtoB企業で起こりがちです。

 

そこで今回は、親会社による求人と子会社への出向において気をつけるべきことについて確認していきましょう。

採用について法律で決められていること

青空のもとで咲き誇るひまわりの花。

まず、社員の雇入れにあたって、法律で決められていることについてみていきましょう。

 

企業が社員を募集するときには、従事すべき業務内容および賃金・労働条件、その他の労働条件を明示しなければならないことが、職安法において定められています。

 

そして、募集に応募してきた人(求職者)を採用するときには、労働契約の締結にあたって労働条件を明示することが、労基法により会社に義務付けてられています。労働条件に関して、会社と社員との間のトラブル発生を防止するのが目的です。

 

明示しなければならない労働条件のひとつに「就業の場所及び従事すべき業務に関する事項」(絶対的明示事項)があります。これは、書面の交付によって明示しなければなりません。

 

会社が労働条件を明示しない場合や、書面によって明示しない場合であっても、労働契約自体は有効に成立しますが、会社には罰則の適用がありますので注意が必要です。

親会社の採用で子会社へ出向させていいのか

スタバのアイスコーヒー。青空に向かってストローの刺さったカップを捧げ持つ指先。

では、親会社の正式な社員として採用したうえで、業務上の必要性に応じて然るべきタイミングにおいて、その社員を子会社や関連グループ企業に出向させる場合はどうでしょうか。

この場合では、原則として前段でお伝えしたような、罰則が適用される法違反の問題は発生しないと考えられます。

 

したがって、採用の際に「就業場所および就業すべき業務」として、子会社に出向してその会社の業務に携わることがありえることを説明して、また社員も同意していれば、入社して間もない新入社員であったとしても、親会社の業務の必要性にもとづいた子会社への出向命令を拒否できないことになります。

 

これに対して、親会社が実際には子会社の社員として採用する意図でありながら、採用プロセスでそのことについて何ら説明することなく、労働契約を締結した場合はどうでしょうか。この場合、罰則が適用される法違反にあたる可能性が強いでしょう。また、裁判所は出向について、たとえ社員本人の同意がある場合であっても、その出向先企業が社員の予測できる範囲でなければ出向命令自体が問題になることを指摘しています。

 

よって、何ら説明を受けることなく採用後すぐに子会社への出向を命令された社員は、自分が希望していない会社にまるではじめから採用されたことになるような出向命令に応じる義務はありません。また、そのような出向命令は無効となるでしょう。

 

もし、実際に社員を雇用する会社は子会社であって、親会社は名前を貸したにすぎない、というのであれば、虚偽のある求人として前段でお伝えした職安法に違反することになり、認められません。

親会社の社員として正式に採用し、業務の都合に応じて子会社に出向させるケースが多いのであれば、採用時にその事実を正確に伝えて、しっかり事情を説明することがとても重要です。

 

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必要性を欠いた会社の権利濫用とみなされると、出向命令が無効となるだけでなく、社員との信頼関係も築けません。

 また、人材獲得の競争が激化する時代に、大事な戦力としてせっかく入社した社員を、「入社早々、子会社への出向なんて聞いていなかった」として、簡単に退職に向かわせるべきではないでしょう。

 

入社後の失望を防ぐためにも、行き過ぎた期待を持たせるのではなく、正確な情報を伝えることが大切だと思います。

窓辺のデスク。観葉植物の棚とノートパソコン。麦茶の入ったグラス。

社会保険労務士高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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