【人事担当者のよくある悩み】
うちの会社では、年休申請書をを直属の上司に提出することになっている。各部署から人事部に申請書が集約されて、社員それぞれの年休日数を管理している。
ところが、ある部署でこの正規の申請をしないで休んだ社員がいる。直属の上司には口頭で翌日休むことを伝えたそうだが、「用紙を提出しなさい」との上司の注意を無視して、当日休んだらしい。日頃からルーズな社員のようで、上司は「無断欠勤の処理にすべし!!」とお怒りだ。
正規の手続きで人事部に情報が届かなければ、勤怠管理でミスして給料計算にも影響が出てしまう。だからといって、ペナルティーとして無断欠勤にしてしまうのもやりすぎでは?
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今回は、このように正規の申請手続きをしないで休んだ社員に、会社としてどのように対応するべきなのか、詳しく確認していきましょう。
申請手続きルールを設けるのは適法か
労基法では、年休の申請手続きについて何ら定められていません。
会社のそれぞれの実状に応じて、任意に手続きルールを定めて問題ないと考えられているからです。ただし、この手続きに関するルールのために社員の年休取得を抑制しないよう、心がけなければなりません。
冒頭の会社の手続きルールは、各部門と人事部門のやり取りがスムーズに行われ、社員それぞれの勤怠を適切に管理するためのものです。また、社員のシフトを調整して代替要員を確保するなど、すみやかな対応を実現するためのものでもあります。
このように合理性のあるものですから、労基法に違反しているわけでは決してありません。有効なルールとして考えられます。
では、会社が決める手続きルールによらずに休んだ場合、年休ではなく無断欠勤として取り扱うことはできるのでしょうか。
手続きルール違反の年休申請は有効か
そもそも年休の成立には、社員が年休取得を希望するとき、会社にその旨の意思表示をすれば足りるとされています。
冒頭の例では、会社が定める手続きルールによらずに休んだ社員は、一応事前に上司に年休を取る旨を伝えています。
部下の労働時間をマネジメントする立場の上司としては、その社員が「明日年休をとりたい」と言い出したときに、その社員の担当業務の状況、職場の繁閑、他の社員との業務の調整、代替要員を確保できるかどうかなどを判断して、その場で時季変更権を行使することもできたことでしょう。
そう考えると、
- 会社が決める正規の年休申請の手続きルールを守らなかった
- 「届出用紙を提出するように」との上司の注意をきかずに当日休んだ
これらの事実から、口頭による社員の年休取得の請求を直ちに無効(無断欠勤)として取り扱うことは、妥当ではありません。
手続きルール違反に対する会社の対応
前段でお伝えしたように、上司が年休の時季変更権を行使したとしても、その効果は社員の希望する日を年休として承認しないというだけにとどまります。
無断欠勤として扱うことができる、というわけではありません。
なぜなら、社員の無断欠勤は、労働義務違反として懲戒処分の対象となり、少なくない社員の不利益(月給から差し引く必要がある、賞与の査定に影響する、など)が課される可能性があるからです。会社として慎重な対応が求められます。
冒頭の例では、社員が直属の上司に年休を取りたい旨を伝えています。年休取得を希望する日に休むことを、上司に承諾を求める意思表示として考えることが合理的だといえます。そこで直ちに無断欠勤にするのは問題があります。
その社員は、普段から仕事をするうえで少々いい加減な態度がみられるとのことでした。「ルールを無視してもいいのか、と他の社員への示しがつかない」ということなら、会社の正規の申請手続きに違反した点について、服務規律違反として取り扱うなどの対応が考えられるでしょう。
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申請手続きのルールは、本来、仕事のやり取りをスムーズに行い、勤怠管理をミスなくマネジメントするために設けられたものでした。
また、職場の仕事を調整して代替要員を確保するなどして、特定の社員に仕事が偏らないようにする意図もあったでしょう。
申請手続きのルール設置の本当の意図を理解してもらえれば、ルール違反もぐっと減るはずです。部署間を超えた連携がスムーズにいくよう、職場で根気強く伝えていきたいですね。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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