時間単位年休を仕事の合間や遅刻の穴埋めに使ってもいいですか

デスクの上の観葉植物、ノートとぺン。

年次有給休暇は、もともと日単位による取得しか認められていませんでした。

 

そんななか、平成22年4月1日施行の改正労基法によって、労使協定による時間単位の年次有給休暇制度が新しく認められました。

 

制度のスタートから10年近く経ちますが、就業規則のコンサルティングの中で経営者や管理職の方からよくお伺いするのは、次のようなものです。

 

「社員に『時間単位年休を仕事の合間にとったり、遅刻したときの穴埋めに使ってもいいですか?』と聞かれたら、どう対応していいのか・・・。

職場を出たり入ったりすると職場のセキュリティに支障が出そうなので、できれば仕事の合間に年休をとってほしくない。

また、遅刻の穴埋めに年休を使うことで、職場の規律が乱れてしまわないか心配だ。」

 

この内容をまとめると、問題は次の2点ですね。

  1. 1.時間単位年休を仕事の合間でとることを制限できるのか
  2. 2.時間単位年休を遅刻に充当しなければならないか

そこで今回は、これらについて詳しくみていきたいと思います。

時間単位年休を仕事の合間でとることを制限できるのか

黒電話とメモ帳。ペンが添えられている。

職場のセキュリティ環境、規律を考えると、時間単位年休を仕事の途中で取得するのはなるべくなら控えてほしい、との思いはもっともなことでしょう。

これについて、施行通達では次のような旨が示されています。

  • 社員が時間単位による取得を請求したときに日単位へ変更することや、日単位による取得を請求したときに時間単位へ変更することは、時季変更にあたらずNG
  • あらかじめ労使協定において時間単位年休を取得できない時間帯を定めることはNG
  • 所定労働時間の途中での時間単位年休の取得を制限することはNG
  • 一日において取得できる時間単位年休の時間数を制限することはNG

社員による時間単位年休の取得が仕事を妨げるかどうかは、具体的かつ客観的にそれぞれ社員の申請内容を判断しなくてはならないので、上記のように時間単位年休の取得に制限をつけることは認められていません。

(年休の時季変更権について、詳しくは過去記事「年休の時季変更権はどんなとき、いつまでに行うのか」をご覧ください。)

 

このことからから、やはりセキュリティはじめ職場の規律や秩序が乱れるおそれがある、という理由から時間単位年休を導入しない企業は、私の肌感覚ではありますが、比較的多いと思います。

時間単位年休を遅刻に充当しなければならないか

黄緑、深緑、白のカラフルな目覚まし時計が3つ並んでいる。

通常の日単位の年休について、欠勤や病欠に割り当てることを認めている企業もあるでしょう。

そこで、時間単位年休を遅刻に充当しなければいけないのか?という疑問が生じます。

 

実は、欠勤や病欠といったまる1日の休みの場合と、遅刻などによって当日の勤務時間の一部が休みの場合とは取り扱いが異なります。

 

というのも、時間単位年休を取得する単位の「時間」とは整数の時間数を指し、1時間に満たないものは含まれません。たとえば30分の遅刻に対して1時間の時間単位年休を充てなければ適法とならないことになります。

 

ですから、30分遅刻したことで1時間の時間単位年休を取得することになり、本来なら働くことが免除されているはずの残りの30分も就労することになってしまいます。社員にしては、理屈では理解できるもののなんとなく損した気分・・・もあるかもしれませんよね。

 

かといって、30分遅刻した社員に1時間の時間単位年休から遅刻分を差し引いた残りの30分について、職場の外で待機させて休憩をとってもらう・・・という取り扱いも現実的ではありませんね。

 

そもそも年休を社員の権利として取得できるのは、あくまで前日の終業時刻までに申し出た場合です。始業時刻の直前に年休を申し出ることは、すでに当日の午前0時を過ぎた年休当日の申出であり、事後請求となります。

 

年休を事後請求するには会社の承諾が必要です。よって、会社は遅刻に時間単位年休を充当したいとの社員からの請求を認めず、そのまま遅刻として取り扱うこともできます。

 

**

時間単位年休の導入要件は、会社と社員による労使協定です。

ですから前述のような問題があるため、労使協定を行わず時間単位年休を導入しないこともそれぞれの企業の自由です。

また、導入するにあたっても労使協定の単位はひとつの事業所ごとですから、企業全体ではなくたとえばとある営業所や支店のみ時間単位年休を導入することも可能です。

 

そもそも時間単位年休制度の趣旨のひとつとして、全国的に取得率が低水準で推移していることから、年休をもっと有効に活用できるようにすることがあります。

 

すっきりリフレッシュして、充実した気持ちでまた仕事に取り組むためには企業としてどのような方法を選択するのか。社員の希望をヒアリングしたり、さまざまなケースをシミュレーションしたうえで、自社にフィットした選択を柔軟に考えたいですね。

バカンスの準備。麦わら帽子、サングラス、カメラ、ジーンズ、ストールが並んでいる。

社会保険労務士高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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