就業規則に記載がないままの変形労働時間制は要注意

テーブルに置かれたコーヒーの入ったカップ&ソーサ―と観葉植物。コーヒーにはハートマークのラテアートが描かれている。

一カ月単位の変形労働時間制を職場で採用するときの要件は、就業規則に定めることです。

 

けれど就業規則に一カ月単位の変形労働時間制のことが書かれておらず、記載なしのままで実施されていて、しかも慣例的に長年にわたって行われている・・・また社員の方からも特に異議が上がっていない・・・。

このようにいわゆる労働慣行として変形労働時間制が実施されているケースも、時にはあることでしょう。

 

就業規則に記載がないまま実施してきた変形労働時間制に関して、次の2点についてご相談がよくあります。

 

  1. 労働慣行となっている変形労働時間制は適法か
  2. 1日8時間、1週40時間をオーバーした分の割増賃金はどうなるか

今回はこれらについて確認していきたいと思います。

労働慣行となっている変形労働時間制は適法か

休憩スペースでコーヒーを飲みながら打ち合わせる2人の男性社員。

一カ月単位の変形労働時間制を採用する場合や、その変形労働時間制の内容を変更した場合、就業規則を労働基準監督署に届け出ていないケースも見受けられます。

このとき、届出が行われていない就業規則によって、変形労働時間制は法律上有効となるのでしょうか。

 

就業規則による一カ月単位の変形労働時間制の有効要件は、「就業規則において定める」ことであって、その届出は有効要件とされていません。

 

よって、就業規則に変形労働時間制を定めていても労基署に届出をしていない場合については、変形労働時間制の効力になんの影響もなく有効とされています。

 

けれど、就業規則に記載がなく、変形労働時間を採用して長年運用しているため事実上の労働慣行となっている場合は、問題があります。

 

就業規則で定めるということは、前述のとおり変形労働時間制の重要な要件だからです。あらかじめ就業規則に定めるという法定の措置が講じられた場合だけ、1日8時間、1週40時間を超える労働であっても法定労働時間として認められることになります。

 

ですから、事実上慣行的に実施されてきて、内容自体はたとえ問題がなかったとしても、労基法32条(労働時間の原則)違反にならないということはできません。

1日8時間1週40時間をオーバーした分の割増賃金はどうなるか

デスクに広げられた就業規則とコーヒーの入ったマグカップ。

前段のとおり、一カ月単位の変形労働時間制について、労基法はあくまで就業規則の定めを要件としています。就業規則に記載しないで行っていた場合は、労基法に違反することになります。

 

では、今まで行ってきた一カ月単位の変形労働時間制を1日8時間労働、1週40時間労働として考え直さなくてはならず、それらを超える労働すべてを時間外労働として割増賃金の支払いが発生するのでしょうか。

 

事実上の労働慣行として一カ月単位の変形労働時間制が行われてきた場合、社員もそれを許容し、異議なく変形労働時間制を認めて長年働いてきたと考えられます。

休日など一カ月のスケジュールも変形労働時間制によって決まり、それらを前提として給料を受領してきた・・・ですから、信義則上就業規則の定めが欠如していたからといって、1日8時間、1週40時間をオーバーした分すべてが時間外労働として、割増賃金の支払い対象となるわけではありません。

 

つまり、社員にとっては変形労働時間制による労働時間の短縮や休日の増加というメリットを受けながら、就業規則の定めを欠いているということをもって、変形労働時間制は無効だから1日8時間、1週40時間をオーバーした分すべてを時間外労働として割増賃金を支払いなさい、と会社に請求するのは公平性に欠けるということです。

 

なお、労基署による行政指導においても、手続きを欠く変形労働時間制については手続きの是正指導がありますが、割増賃金について不払いがあるとしては取り扱っていません。

 

とはいえ、会社と社員の間で無用な誤解やもめ事を生まないよう、変形労働時間制についてあらかじめ就業規則に規定して、社員にしっかりと説明しておくことは言うまでもありません。信頼関係を築くには、言葉を尽くすことがとても大切です。仕事はひとりでやるものではなく、チームでやるものだからです。

 

無駄な残業時間が削減され、効率よく働くことができる変形労働時間制のメリットを気持ちよく最大限にいかしたいですね。

社会保険労務士高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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