残業の自己申告制をうまくいかせるコツ

デスクの上の観葉植物を照らす太陽の光。傍らにノートとペン、コーヒーの入ったマグカップ。

事務職をはじめとするホワイトカラーの仕事は、その成果が必ずしも時間に比例するものではありません。

ここが工場でものを製造する仕事とは異なる点でしょう。

ですから、もともと労働時間の厳格な管理になじまないという性質があります。

 

そのためホワイトカラーの職場では、残業時間の管理について「自己申告制」をとるケースがあります。

けれどこの自己申告制という、残業時間を把握する方法について、

「自己申告制をとっているのはいいものなのか?」

「うちでやっているのは実は有効な方法ではないのでは?」

と、不安げな面持ちで質問をされる管理職の方も、実は多くいらっしゃいます。

 

そこで今回は、

  1. 残業の自己申告制は有効なものか?
  2. 自己申告制をスムーズに運用させるには?

この2点にフォーカスして、残業の自己申告制についてみていきたいと思います。

残業の自己申告制は有効なものか?

コーヒーを飲みながらパソコン作業を行う社員。

残業の自己申告制とは、社員本人が残業内容とそれにかかる時間を自主的に上司へ申告し、事前に上司の承認を得る方法のことです。

実際には1ヵ月まとめて事後に自己申告の記録を提出して、上司の承認を得るケースが多いかもしれません。

 

このような残業の自己申告制は、結論からお伝えすると、方法自体には問題がありません。

労働時間管理のひとつの手段として認められています。

 

通達においても(「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」平成 13 年 4 月 6 日付け基発第 339 号)、自己申告制とは「労働者が自己の労働時間を自主的に申告

することにより労働時間を把握するもの」と定義されています。

そして、会社が残業時間の把握のために自己申告制を採用する場合には、次のような内容の措置を講じることとしています。

  1. 自己申告制の場合も、会社は始業・終業時刻の把握を行い、記録すること
  2. 自己申告制の前に社員に対して、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと
  3. 自己申告による労働時間が実際の労働時間と合致しているかどうかを、必要に応じて実態調査を行うこと
  4. 社員の労働時間の適正な申告を阻害する目的で時間外労働時間数の上限を設定するなどの措置をしないこと。時間外労働手当の定額払などが適正な申告を阻害する要因となっていないか確認すること

つまり、自己申告制という方法自体は認められていますが、適正にうまく運用するには上記のような点に留意しなければなりません。

自己申告制をスムーズに運用させるには?

オフィスの打合せデスク。ノートパソコン、コーヒーカップ、ノート、ペン立てが載っている。

残業管理について、社員が自主的に申請して上司が承認、という所定の手続きを定めた場合には、(特別な理由のある場合は別として)その手続きによるものだけを残業として認めるルールにするのは、必ずしも違法ではありません。

ただしそれは、自己申告制が適正に運用されていて、社員の残業時間を申告する自由が担保されていることが前提です。

 

たとえば、

  • 「今日はこのくらい残業が必要だ」と社員が所定の用紙に記入して、直属の上司に申請
  • 直属の上司がそれを確認し、上司の命令によって残業を行う
  • (上司が残業内容を本人に質問し、特に急を要する業務でないと判断した場合には、経費節約のため残業しないよう指示することもある)
  • 残業を行った実際の時間を記入したカードを直属の上司に提出し、承認印をもらう

といった具合に、残業管理が適正に行われていることがポイントとなります。

 

反対に、申請なしの残業が常態化している場合には、「残業申告の手続きルールに違反しているので残業として扱わない」というのは認められません。「(申請なしの残業が常態化している)このような状況下での自己申告制は適正な運用が期待できない」として、サービス残業分の割増賃金の支払いを命じている判例もあります。

 

つまり、自己申告制をうまくスムーズに運用するには、上記の例のように上司と部下で仕事内容についてコミュニケーションをとり、上司が部下の仕事への取り組み方に目配りすることがとても大切です。

普段から部下の仕事のやり方を「場当たり的に仕事をやっていないか」「単純作業に時間を費やし過ぎていないか」「いつも緊急の仕事ばかりに追われてはいないか」といった視点でみて、よくない習慣があれば修正してあげることです。

 

この上司と部下の日常的なやりとりが効率よく仕事を進めるための基礎となり、自己申告制をうまく運用していくことにつながります。

社会保険労務士高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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