グループ企業間の人事異動で気をつけたい出向と配転の違い

にぎやかなデスクの上。クロック時計、花びん、観葉植物、筆入れ、ペン、メモ書きなどが所狭しと並んでいる。

朝夕はようやく秋らしくしのぎやすい気候になりました。食欲の秋、スポーツの秋、読書の秋・・・と、いろんな楽しみが盛りだくさんの時季ですが、同時に転勤・人事異動のタイミングでもあります。

 

子会社・関連会社への技術指導や、また社員のスキルアップのために親会社から子会社へ人材を送り出すなど、グループ企業間で人事交流が行われている場合もあるでしょう。

 

「プロジェクト運営をはじめグループ企業同士で強いつながりがあるので、人事異動、人事交流をもっと行っていこうという流れにある。この際に転勤(配置転換)と出向の違いをちゃんと理解しておきたい」との質問をいただくこともあります。

 

確かに、グループ企業内の関係性が密接であると、本来出向として対応するべきなのに単なる転勤として取り扱ってしまうなど、出向と配転を混同してしまいがちです。

そこで今回は、グループ企業内の人事異動における出向と配転の違いについて、確認していきたいと思います。

出向と配転の違い

モノトーン調のデスクの上。ノートパソコンのシルバー、手帳とスマホのブラック。

まず配置転換(配転)とは、同じ企業内において、一時的なものではなく、相当の長期間にわたって社員の配置を変更することです。

このうち、職種を変更する配転を配置換え、勤務地を変更する配転を転勤と呼んでいます。

 

雇用された企業の社員としての身分はそのままに、指揮命令権は配属された新しい部署や事業所に移転されることになります。

 

次に出向とは、出向元の企業が雇用する社員を、出向先の企業のもとで相当の長い期間、そこでの指揮命令に従って、仕事を行うものです。つまり労務の提供先は、出向先の企業となります。

 

出向は、出向元・出向先の双方の企業と、社員との間にそれぞれ労働契約関係が生じることになります。

この出向による二重の労働契約関係は、出向元と社員との間の労働契約上の権利・義務が、部分的に出向先に移転するものと解釈されています。

グループ企業内の人事異動

水色の鉛筆、水色のカップ&ソーサ―、水色のアルバムがテーブルに並んでいる。

前段のように出向と配転では、その性質が異なります。親子会社間や関連会社間などグループ企業間での人事異動においては、配転と出向をともすれば取り違えてしまいがちですが、社員の立場を含めて実質的に判断しなければなりません。

 

出向なのか、それとも配転なのか、判断基準のポイントは、「指揮命令権の主体が人事異動先の企業に移転しているかどうか」です。

 

親会社から子会社への人事異動において、具体的な業務命令権が子会社に帰属していることから、配転ではなく出向と判断した裁判例があります。

また、もとは会社の一部門であったがその後同一資本系列の別会社に譲渡した工場への配転命令を出した事案において、両企業の独立性を認めて、配転ではなく出向であると判断された裁判例もあります。

 

つまり、以下のように整理できます。

  • 配転はあくまでの同一企業内における人事異動
  • 出向は別個の法人格を持つ企業間における人事異動(それに伴って指揮命令権の主体が移転する)

子会社・系列会社などグループ企業間の人事異動は、子会社・系列会社が独立した法人格を持つ限り、異動した社員への指揮命令権は移動先の会社に移転したことになります。法律的には、配転ではなく出向ということになります。

実務的な対応は

大きな窓に面した会議室。光が差し込んでいる。

このように出向においては、出向元の企業の裁量は限られてきます。

ですから出向については、配転よりも慎重に検討する必要があり、グループ企業間の人事交流が将来的にも継続するのであれば、出向に関する規定を就業規則に追加しなければなりません(出向の発令は、出向に関する就業規則の規定があることが前提)。

 

また、出向する社員の労働条件などについての定めがあることが望ましいでしょう。

 

具体的には、就業規則本体に出向応諾の義務のみを定め、別規程として出向規程を設け、出向における労働条件を定める方法があります(別建てにするほうがわかりやすいため)。

 

やはり違う企業で仕事するのは、いつもと勝手が違うので漠然とした不安感がつきまとうものです。以下の項目を定めておくと、社員も安心して出向先でパフォーマンスを発揮できることでしょう。

  1. 出向先の範囲
  2. 出向時の手続き
  3. 出向期間
  4. 出向中の労働条件
  5. 復帰時の手続き
  6. 復帰後の労働条件

以上のように、グループ企業間での人事異動では出向と配転の違いを踏まえ、人事異動の発令時だけでなく適宜本人への適切なフォローを行っていくことが、社員の高いパフォーマンスを引き出すためには欠かせないと思います。

社労士事務所Extension 代表・社会保険労務士 高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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