労働時間の効率化で残業代が少なくなるのは不利益変更?

赤色の目覚まし時計、額縁、本、観葉植物の鉢植えが壁際に並べられている。

五月晴れの空が心地よいゴールデンウィーク前半ですね。まとまったお休みを設定している企業もあるかもしれません。

労働時間を社員が勤務する労働日数でみると、労働日数は休日数を決めることになります。

 

このように会社における労働時間制度とは、労働時間の配分を決める仕組みのことです。つまり、社員の働きによる労働力の「量」と「タイミング」を決めることになります。

社員にとっても、自分の生活のために使える時間を左右するので、業務の繁閑に応じた適正な労働時間の設定は、基本的に生活と仕事の両立のしやすさを決めるものといえます。

 

実は、コンサルティングをしていると、次のような質問をいただくことがあります。

 

「変形労働時間制の導入で労働時間の短縮につながるとはいえ、残業時間が減るとその分残業代も減りますよね。そこで社員から残業代が減るのは自分たちにとって不利益じゃないのか?との質問がありました。これは労働条件の不利益変更にあたるのでしょうか?」

 

労働力の需要の変動に応じて年間の労働時間の配分をあらかじめ決めておく変形労働時間制や、社員自身が仕事の進捗に応じて出勤時間を選ぶフレックスタイム制などの導入で効率良く働くことができる。けれど残業時間が減少すると、それに伴って残業代も減少するのは確かです。

 

そこで今回は、労働時間の合理化が進むことで、残業代が減少することは不利益変更にあたるのかどうかについてみていくことにしましょう。

労働時間制度の柔軟化

テーブルの上に本が積み重ねられている。その上に時計が置かれている。傍らに観葉植物とマグカップがある。

労働力を必要とするときが季節や曜日、1日のうちの時間帯で変動するような場合は、それに合わせて調整を図ることで合理的な働き方を実現できます。

 

労使協定の締結など一定の要件による、フレックスタイム制、一年単位の変形労働時間制、一週間単位の非定型的変形労働時間制がこれにあたります。

 

この労働時間制度の柔軟化の目的は、業務の繁閑に応じた適正な所定労働時間を設定することによって、労働時間を短縮することです。

 

たとえば、月末・月初が忙しいビジネスの場合、そのときにある程度まとまって働いて、その分だけ別の日を休日にする。

またはシーズンで繁閑期のあるビジネスでは、繁忙期に長い時間を設定し、ひまな時期に時間を短くしたり、休日を増やすことで1年間を平均した労働時間の設定にする。

 

このような労働時間の設定で、必要のない労働をやめ、実労働時間の短縮をめざしていくことになります。

不利益変更の問題

ノートパソコンに向かって残業する社員。

前段の通り、労働時間制度の柔軟化は、事業の繁閑に応じて無駄のない適切な所定労働時間を設定していくものです。

 

よってそれまでの労働時間制では所定労働時間になっていた時間が、所定内の労働時間になるということです(その分だけ年間の実労働時間が短縮される効果があります)。

 

今までは残業代が支払われていた時間分について、残業代が支払われなくなるので、その分だけ残業代が減少することになります。

これは労働条件の不利益変更にあたるのでしょうか?

 

これについて、単に1日の労働時間の長短だけにフォーカスして、利益なのか不利益なのかを論じるわけにはいきません。

 

たとえば年間の総労働時間が同じであったとしても、1日あたりの労働時間を長くすると、どこかで休日を増やすなどして、労働時間を短縮しなければならなくなります。つまり、

  • 休日の増加
  • 1日あたりの時間短縮
  • 無駄な残業時間が短縮

といったメリットを得ることができます。また将来的に労働時間の短縮へつながっていくものと考えられます。

よって、残業時間が減少することで残業代が少なくなっても、労働条件の不利益変更には抵触しないと考えられています。

就業規則との関係性

積み重ねられた書籍と時計、ボールペン。

前段で、他の日の労働時間の短縮や休日の増加というメリットがある以上、労働時間制度の柔軟化によって残業時間が減少することで残業代が少なくなっても、不利益変更といえないことがわかりました。

 

そこで、「変形労働時間制など労働時間制度の柔軟化が就業規則で決められたとしても、それに反対したらどうなるのか?」と思われたかもしれません(実際にコンサルティングの現場で伺うことがあります)。

 

会社が就業規則の変更によって労働条件を変更する場合(もちろん変更後の就業規則は社員に周知)について、「社員の不利益の程度、労働条件の変更の必要性、内容の相当性などが就業規則を変更する事情に照らして合理的なときは、その就業規則に定める通りとする」旨が労働契約法で定められています。

 

労働時間制度の柔軟化は、実際に働く時間を短縮する手段のひとつであり、休日の増加などのメリットもあるので合理的理由があるといえます。

たとえ変形労働時間制の導入が定められた就業規則の実施に反対する社員がいたとしても、その社員にも適用されることになります。

(実務的には、正しく理解してもらえるよう社員に詳しく説明することがポイントです。)

 

 

就業規則の規定によって、制度として労働時間が柔軟化されても、運用面で意図通りに柔軟化されるとは限りません。変形労働時間制では、繁閑期の予測が外れることもあるかもしれません。また社員に任せるタイムマネジメントの裁量の幅が狭いようなら、フレックスタイム制もうまく機能しないでしょう。

 

本当の意味で労働時間の柔軟化を行っていくには、

  • 仕事の量や質の「適正化」を図る(本当にその仕事は必要なのか)
  • 仕事の目標を明確にする(誰もが理解できるゴールの設定)
  • 仕事の裁量度を上げる(やり方を任せる)
  • 社員のセルフマネジメント力を育てる

・・・などをしっかり考えていくことが欠かせません。

 

会社と社員の目的をひとつにするために就業規則へ規定することはもちろん大切ですが、それを実践、運用していく環境づくりも並行して進めていきたいですね!

社労士事務所Extension 代表・社会保険労務士 高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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