紹介採用で社員にインセンティブを与えるときの注意点

白いパソコンのキーボード。その上に観葉植物の葉が3つ。白と緑色のコントラスト。

大手企業ではAIやIoTの導入で業務の効率化を進める動きがあり、それを受けてIT技術者の求人も増加傾向にあるようです。専門分野に詳しい即戦力を獲得するため、企業の規模を問わず採用競争は厳しくなりそうですね。

 

人手不足の時代、IT人材に限らず人材確保に頭を悩ますケースは多いかもしれません。

そこで採用方法を広げるために、社員が自分の知人や友人を紹介する「紹介採用(リファラル採用)」を検討する企業もみられます。

 

会社としては何とかして人材を確保したいので、協力してくれた社員にインセンティブを与えて紹介採用を促進したい思いがあるかもしれません。

 

けれど何をもってインセンティブにするといいのか、またそれは法律に適っているのか、判断に迷うこともあるのではないでしょうか。

今回は、紹介採用に協力してくれた社員へのインセンティブについて、実務上注意しておくべき点を確認していきましょう。

採用方法を広げる「紹介採用」

握手するビジネスマン2人。入社の合意。紹介採用。

紹介採用の主なメリットとして、次の3点が挙げられます。 

  1. 社員による紹介のため、求人広告費や人材紹介会社への支払いをはじめとする採用コストを削減できる
  2. 社員が知人や友人の人柄を把握しているので、社風や職場にマッチした人材を効率よく集められる
  3. ミスマッチによる離職を防ぐことができる

スキルや職歴など、求める人材像をあらかじめ詳しく社員に知らせておくことで、マッチングの確率をさらに高めることもできます。

ですから通常は2、3回の面接を経て採用するところを、紹介者である社員の評価が高ければ面接回数を減らす企業もあります。

 

このように欲しい人材と人材争奪戦のなかでもスムーズに出会えて、労力だけでなく時間や費用もあまりかけずに済むのなら、社員に強い協力も求めたくなるでしょう。

 

そこで、「紹介採用による新規人材が3か月以上定着すると、紹介者の社員へ一人あたり五千円の商品券を贈る仕組み」を考えたとします。

これは、法律に抵触しないのでしょうか。

募集活動への報酬の付与について

ノートパソコンを広げ、インターネットで求人を検索する女性。

採用募集についてのルールは、職業安定法で決められています。

採用募集の方法には、まずWebサイト、新聞、求人誌などへ求人広告を出すことが考えられます。原則として自由に行うことができますが、応募者に誤解を与えることのないよう、募集内容では的確な表示や表現に努めなければなりません。このように企業が自ら行う募集のことを、直接募集といいます。

 

また、第三者に募集業務を委託して行うこともできます(委託募集)。これには厚生労働大臣の許可が必要となり、(企業が第三者に支払う)報酬の額には認可が必要です。企業が、委託先に認可を受けた報酬以外の報酬を渡すことは禁止されています。

 

社員による紹介採用は、会社の従業員としての立場で行うため、直接募集に分類されることになります。ではこの直接募集においては、紹介採用のインセンティブとして報酬を与えることはできるのでしょうか。

 

職安法では、社員に賃金以外の報酬を与えることを禁止しています。この報酬とは、現金に限らずすべての財物または利益のことをいいます。つまり、法律で社員に対して支払うことを許されるのは、労働の対価としての賃金に限られます。

 

もしも、委託募集で委託先に認可を受けた報酬以外の報酬を渡すこと、直接募集で社員に賃金以外の報酬を与えることが可能であったとしたら、甘い言葉によって入社の勧誘を受けたり、辞めたくても不当に足止めを食らうなど、求職者の不利益が発生しかねないからです。これを防止する目的として、募集活動への報酬の付与が禁止されています。

人事評価によることが妥当

パソコンを前にto doリストを書き出す女性社員。

以上のことから、前段のような「紹介者の社員へ一人あたり五千円の商品券を贈る」ことは、募集活動への報酬の付与にあたり(商品券は財物に該当)、法律に違反することになります。

 

会社としては、「社員が人材を紹介して、採用に協力してくれたのでお礼をしたい、協力の姿勢に何らかの形で報いたい」との気持ちがあるかもしれません。

けれど今は、企業には法令遵守を越えた倫理観が求められる時代です。

明らかに法律に違反するのに、紹介採用に対する報酬は支払うべきではないでしょう。

 

紹介採用にかかる会社への協力姿勢を報いるなら、実務的には人事評価の査定によって月給の昇給や賞与で還元することが考えられます。

 

たとえば

  • 担当グループの目標達成(=人材の確保)を目指し、
  • 関係先への必要な対策(=自分の知人や友人を会社へ紹介すること)を立案し、
  • 折衝調整を上司と連携しつつ進めること(=会社が求める人材像に合致しているかどうかのすり合わせ、また具体的な連絡の橋渡しなど)ができる

といった視点で評価するのもひとつでしょう。

評価項目やその基準の例を以下に挙げますので、参考にしてみてください。

評価要素群 評価項目 評価基準
 能力評価 折衝・調整・対策力

 発生しがちな例外処理について上司や関係者と相談しながら主体的に処理できる

 調整をお願いする関係先の事情をよく把握したうえで、折衝することができる

 相手に不快な印象を与えないように折衝することができる

 関係先のメリットをよく説明しながら折衝に当たることができる

 

前述のように、紹介採用はプラス面の多い採用方法です。

実務上の注意点を踏まえ、力を合わせてともに会社を伸ばせる人材との出会いをぜひ増やしたいですね!

社労士事務所Extension 代表・社会保険労務士 高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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