社員が在宅勤務を選んだときの労働時間マネジメント

自宅の部屋。アンティーク調の椅子にひざ掛けがかかっている。観葉植物が癒し。

記録的な大雪から、列車や車の立ち往生が各地でみられますね。

鉄道ダイヤが乱れると、通勤ラッシュに影響が出ることもあるかもしれません。

 

交通機関の混雑で通勤への支障が予想されるとき、オフィスへ出勤せずに、自宅で仕事をする「在宅勤務」の制度があるといい、と考える企業も増えてきているようです。

大雪や台風のとき、また家庭や業務の事情など、都合に応じて勤務先へ行かずに働ける選択ができれば、時間を有効活用でき、非常時でも仕事を継続できるなど、社員と企業の双方に大きなメリットがあります。

 

とは言え、在宅勤務をはじめとするテレワークを導入するには、セキュリティや労務管理の面でハードルが高いと思われることも多いのではないでしょうか。

最近、「テレワークでの情報漏洩に備える損害保険」がプレスリリースされていましたが、働き方改革推進の流れを受けて、多方面から対策が進むかもしれませんね。

 

そこで今回は、テレワークにおける在宅勤務の労務管理、特に頭を悩ませがちな労働時間マネジメントについて、詳しくみていきたいと思います。

在宅勤務で働き方の選択肢が増える

オフィスでパソコンに向かってマウスを操り、作業する社員の手。

テレワークは働く場所によって、次の3つに区分されています。

  • 在宅勤務(オフィスへ出勤せず自宅で仕事)
  • モバイルワーク(外出先・交通機関の移動中に仕事)
  • サテライトオフィス勤務(勤務先のオフィス以外にある拠点で仕事)

在宅勤務は、職場へ月に一回も出勤しないでずっと自宅で仕事するもの、ではありません。

普段は勤務先のオフィスに出勤し、社員が必要なときに自宅で仕事することが選べる、という緩やかな制度として取り入れられているケースが多いようです。

つまり在宅勤務制度は、福利厚生ではなく、仕事のやり方(労働環境)の選択肢が増えるということです。

 

フレキシブルな働き方ができる在宅勤務ですが、その就業場所は通常のオフィスでの勤務とは異なり、むやみに会社が介入するべきところではない、社員のプライベートな自宅です。働く時間と日常生活の時間帯が混在せざるをえない働き方ともいえます。

そこで、上司の目が届くオフィスでの勤務を前提とした労務管理から、この状況を考慮した適切な労務管理へ移行することが必要となります。

在宅勤務における労働時間の取り扱い

自宅で仕事する女性社員。自宅なので白いセーターに青いジーンズとラフな格好。

在宅勤務の労働時間には、原則として、事業場外労働に関するみなし労働時間制が適用されます。みなし労働時間制が適用されるかどうかは、次の要件によります。

 

  1. 寝食はじめプライベートな日常生活を送る自宅で、仕事が行われること
  2. 情報通信機器が常時ON状態におくよう、会社から指示されていないこと
  3. 会社から具体的な指示を随時受けて、仕事が行われていないこと

 

2)での情報通信機器とは、パソコン、社員本人が所有する携帯電話端末など、業務の実態に応じて判断されることになります。

 

3)での情報通信機器が「常時ON状態」とは、会社が電子メール、電子掲示板などによって具体的な指示を随時行うことができ、社員の方でも会社から具体的な指示があれば即レスポンスを返さないといけないような状態のことです。

 

つまり、会社からの具体的な指示に備えて社員が手待ち状態で待機しているか、待機しながら作業を行っている状態が想定されます。単に回線が接続されているだけで、社員が情報通信機器から自由に離れられるなら、この状態にはあたりません。

また、仕事の目的、目標、期限などの基本的事項を指示したり、その変更を指示することは「具体的な指示によって仕事が行われる」に該当しません。

 

なお、自宅内に仕事専用の個室を設けていてもいなくても、上記の1)~3)の要件を満たせば、みなし労働時間制が適用されることになります。

運用のポイントは会社と社員の関係性

自宅の部屋。趣味のギターが飾られているが、仕事ができるようにオフィス仕様にパソコンや作業机が配置されている。

では、具体的に事例をみてみましょう。

たとえば労働契約において、勤務時間帯と日常生活時間帯が混在しないよう、

  • 勤務時間9:00-12:00
  • 仕事専用の個室を自宅に確保すること

などと在宅勤務についての取決めがあり、この措置のもとで会社から具体的な指示を随時受けて仕事する場合はどうでしょうか。

 

この場合、みなし労働時間制は適用されません。みなし労働時間制の趣旨である「労働時間を算定することが難しい」状態にはあたらないからです。

 

なお、みなし労働時間制が適用となる場合であっても、労働したとみなされる時間が8時間を超えるときや、深夜労働を行った場合には、割増賃金の支払いが必要です。

社員は、仕事を行った時間を日報などに記録し、会社はそれを確認することで労働時間を適切に把握しなければなりません。場合によっては、会社と社員で話し合って、所定労働時間の設定や仕事内容を変更するなどの改善を講じる必要もあるでしょう。

ですから当然、在宅勤務を選択する社員の自律も求められます。

 

このように在宅勤務を制度として運用するには、会社と社員の信頼関係があってのことなので、会社の一方的な業務命令でやるべきではありません。在宅勤務であっても労働関係法令は適用されますから、これを踏まえてきちんと労働条件を明示し、社員の意向を聞き、合意のもとで実施することが大切です。

これが、「サボっているように思われないか」「オフィスにいないと周りから非難されないか」といった在宅勤務に対する社員の気兼ねや不安を払しょくし、利用しやすい制度として社内へ浸透させる第一歩になります。

 

人材争奪戦の時代、企業には今いる社員に対していかに働きやすい環境を整え、定着を図る対策が必要となってきています。

制度の押しつけでは反発もあるでしょうが、制度の意味合いやメリットなど、企業と社員双方の理解を深めることで、会社を伸ばす働き方の選択肢を増やしていきたいですね。

社労士事務所Extension 代表・社会保険労務士 高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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