社員が体調不良で休むとき問われる会社の対応

もこもこのフリースを施した茶色の手袋、白とベージュのチェック柄のマフラー、白い毛糸の帽子を防寒用に用意して机に並べている

強い寒波の影響で、厳しい冷え込みが続く毎日ですね。

 

冷えや乾燥、室内外の寒暖差から体調を崩す社員が出てくるかもしれません。

 

具合が悪いまま仕事をしていると普段よりもパフォーマンスは落ちますし、何より本人の健康状態が心配です。

休んでしっかり体調を整えてもらいたいところですよね。

 

けれど次のようなとき、会社としてどんな取り扱いをしてよいのか迷う、とのご相談を受けることがあります。

 

 

  • 病気で欠勤した社員が、後日年休に振り替えたいと申し出てきた。必ず聞いてあげないといけないのか?
  • 体調が良くなったので、午後から出社してきてさらに残業する社員。残業代の支払いはどう考えるといいのか?
  • 休んでいる社員を会社に呼び出さなければならない緊急事態が発生。果たして呼び出していいものなのか?

今回はこれらのシチュエーションにおいて、会社がとるべき対応について確認していきたいと思います。

病気欠勤を年休に振り替えたい

マスク2枚と体温計。

突然の体調不良、病気やケガ。そんなとき前もって年休の取得届を出すことはできませんよね。

そこで後日になって、その欠勤日を年休に振り替えたいと社員が申し出てきたとき、会社としてはどのように対応するといいのでしょうか。

 

この場合、社員が当然の権利として、後日の年休振替の請求権を持っているわけではありません。

就業規則の規定や、会社の承認があって初めて振り替えが認められることになります。

ですから、「年次有給休暇」に関する規定を就業規則でまず確認しましょう。

たとえば就業規則の規定例は、次のようなものが考えられます。

 

 

「突発的な傷病その他やむを得ない事由で欠勤したとき、事前の届出が困難であったと会社が認めた場合には、事後の速やかな届出によってその欠勤を年次有給休暇に振り替えることができる。ただし、この承認は会社又は所属長の裁量によるものとし、必ず行われるものではない。」

 

なお、このような事後の年休への振替を認める旨が就業規則に明記されていなくても、労働慣行として成立しているような場合は、もちろんそのように取扱うことになります。

ただし、その振替の措置が制度として確立しているような場合は、就業規則への規定が必要です。そんなときには上記の規定例をひとつの参考として、就業規則への追記をお勧めします。

午後から出社→残業のとき残業代は必要か

マスクをしてせき込みながら午後から出社する男性社員

体調が思わしくなく午前中は休んでいたものの、具合が良くなってきたので「もう治りました!」と午後から出社してきた社員。滞っていた仕事を片付けるために2時間の残業をしたとき、残業代の支払いはどのように考えるとよいのでしょうか。

 

この場合を整理すると、半日年休が認められている会社であれば、

  • 午前中に半日年休を取得、午後から勤務
  • その日に定時後2時間の残業をした

ということですよね。

 

そこで残業代について結論から言うと、終業時刻後に仕事をしても、1日における実際の労働時間が8時間を超えない限り残業代を支払う必要はありません。

残業代(割増賃金)は、あくまで実際の労働時間が8時間もしくは1週40時間の、法定労働時間を超えた場合に、その長時間労働への補償として支払いが義務づけられているものだからです。労基法は実労働時間主義をとっており、法定労働時間を超えない理由が年休によるものであっても、実際に労働した時間が8時間を超えるか?がポイントになります。

 

法律的な解釈による残業代支払いの有無については、このようになりますが、そもそも午前中を休んでいたのは体調がすぐれなかったから。

こんなときは、まず本人の体調を万全に整えることを優先して、残業させないように労働時間マネジメントを考えたいですね。

緊急事態発生で年休の取消しはできるか

年休中の社員を呼び出そうとスマートフォンを操作する男性上司。

年休当日に緊急の業務が発生したとき、年休を取り消してその社員を呼び出すことはできるのでしょうか。

緊急事態の発生について、当日になって発生した場合と、事前に発生した(そのため当日の年休付与が難しくなった)場合の2パターンが考えられます。

 

後者の場合、業務の緊急性を考えたうえで年休の取消しが可能ですが、問題となるのは前者の場合です。当日に緊急の業務が発生したからといって、会社が一方的に年休を取り消して社員に出勤を命じることはできないと解釈されています。当日の午前0時には、労働義務のない日として年休が開始しているからです。会社側の一方的な取消しは、当日の年休を与えなかったことになるため、法律の趣旨に違反することになります。

 

ただし、社員本人の同意を得ることができたなら、合意のもとで当日の年休を取り消して、出勤を命じることは差し支えないとされています。社員がその出勤の要請に対して応じる必要があるかどうかは、その出勤要請の事由と年休制度の本来の趣旨(社員の心身のリフレッシュ)を比べたうえで、会社と社員のお互いが権利を濫用していないかを考えることになります。

 

たとえば、火事などの重大事故によって人身救助が必要なときや、その社員でなければ対応できない重大な故障が発生したときに、社員が年休を優先すると権利濫用になります。けれど、他の社員で代わりがきいたり、時間はかかってもなんとか対応できるような場合は、年休を優先させても社員の権利濫用とはなりません。

 

ですから社員が体調不良で休んでいるときには、その発生した事態の大きさや緊急度などと、社員の病状を総合的にみて判断することになります。

こんないざというときのためにも、その人しかわからないような属人性の高い仕事を少なくし、代替要員が確保できる体制づくりを普段から心がけておきたいですね。

 

 

社員が体調不良で休むなど通常のフォーメーション通りとはいかないとき、あらゆることにスムーズな対応ができるかどうかは、普段からの仕事のやり方にかかっています。

イレギュラー事態をきっかけに仕事の見直しを行い、ぜひプラスに転じさせたいですね!

社労士事務所Extension 代表・社会保険労務士 高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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