出張中はどこまで労働時間にカウントするか?

キャリーバックをひいて、新幹線の改札を抜ける男性社員。

年明け早々、取引先へ新年のあいさつ回りを兼ねて、遠方へ出張に出かける機会も多いかもしれません。

 

出張期間は会社の業務命令に基づくものであっても、法律上の労働時間という観点からみると、「拘束時間=労働時間」とは一概にいえません。

オフィス内で仕事をしている時のように、上司が直接的に労働時間マネジメントをできる状況にはなく、会社の業務命令による拘束時間とはいえ抽象的なものだからです。たとえば新幹線の座席で小説を読んだり、ウトウト居眠りをしたり、駅弁を食べたりすることは普通に想像できるシチュエーションですよね。

 

けれど、これらは果たして労働時間と言えるのだろうか・・・と考え出すと、頭の中でクエスチョンマークが飛び交いませんか?

特に出張中の勤怠管理や残業計算で「どこまでが労働時間?」と、頭を悩ませることはありませんか?

実際に次のような質問をいただくこともあります。

  • 出張の往復で新幹線や飛行機に乗っている時間は、労働時間なのか?
  • 出張期間中の休日はどう対応すればいいのか?
  • 休日に出張の場合は休日労働になるのか?

今回は、これらについて詳しくみていくことにしましょう。

出張の往復で乗り物に乗っている時間は労働時間?

新幹線の社内。普通車両。

出張の往復で新幹線や飛行機などの乗り物に乗っている時間を、労働時間にカウントするかどうかの判断ポイントは次の2点です。

  1. 乗車中に物品や乗客の監視・管理など、果たすべき業務があるか?
  2. 単に目的地まで乗車しているだけか?

1)は、物品、現金、有価証券、貴金属、機密書類などの運搬すること自体が出張の目的となっているような場合です。あるいは、VIPの護衛や、特別な病人の看護にあたる場合が考えられます。この場合の乗車時間は、運搬などの目的業務を遂行している時間です。よって、交代要員がいてその業務から解放されるとき以外は、原則として労働時間にカウントされます。

 

2)は、出張の目的地に赴くために、単に新幹線、バス、飛行機、船舶などに乗って往復しているような場合です。この場合の乗車時間は、乗り物から降りて自由行動ができない拘束時間です。けれど、仕事に従事していないという点では休憩時間と同じですから、労働時間にカウントされません。乗車中は行動の制約はあるが、何も従事すべき仕事がなく、自由に休息をとることができるので、休憩時間と同じ性質の時間として取り扱っても差し支えがない、という考え方になります。

 

なお、この単なる移動時間は労働時間にカウントされないので、「みなし労働時間」にもあたりません。とはいえ出張には移動時間が多く含まれるので、労働時間の把握がややこしく困難になることが多いでしょう。そこで就業規則の規定によって、「(通常の事業場外労働として)当日の所定労働時間労働した」とみなして取り扱うことには問題ありません。

出張期間中の休日はどう対応する?

富士山の前を通過する新幹線

出張期間中であっても、会社の指揮命令下にあって仕事をしていることにかわりはないので、オフィス内で仕事をしている場合と同じように毎週少なくとも1回、もしくは4週4日以上の休日を付与する必要があります。

 

ですから休日を含む期間の出張命令を出す場合には、出張先で休日がとれるように出張スケジュールを考えなければなりません。この休日に出張先で具体的な仕事をするようなスケジュールを上司(会社)が認めた場合は、休日労働を命令したことになり、残業手当の支払いも必要となります。

 

けれど出張期間中の休日について、果たすべき具体的な仕事の指示や命令を行っておらず、出張先で休息・休養にその日をあてることができる場合には、出張期間中であっても「休日」に該当します。

 

つまり、出張期間中に休日があっても、それは休日として仕事を命令しないようにスケジュールを組んでいれば、当日に仕事をしていないので、休日労働にはあたりません。

休日に出張の場合は休日労働になるのか?

部下の出張報告を労う女性リーダー。

たとえば、休日に出張に出発し、1週間の出張業務を終えて次の休日に帰着するときは、2週間にわたって連続勤務することになります。こんな長期出張の場合、休日中の出張旅行(乗り物での移動時間)は休日労働にあたるのでしょうか。

 

休日労働となるには、休日に労働時間としてカウントされる時間があることが必要です。ですから、休日に出張旅行する場合、それが労働時間にカウントされるかどうかがポイントとなります。

 

これは前段でもお伝えした通り、その休日の移動時間に物品の運搬や監視など具体的な仕事の指示があれば労働時間にカウントされ、休日労働となります。

けれど単に乗車しているだけで移動の間は好きに過ごしてよいような場合は、労働時間にカウントされません。

 

よって休日労働として取り扱わなくても差し支えなく、残業手当の支給対象にもなりません。

 

ただし、このような休日の出張旅行でも、当日に仕事の会合があり、それに出席する場合は、この会合へ出席するという業務に関連するものなので休日労働となります。

 

 

出張期間における労働時間の法律的な取り扱いは以上のようになり、労働時間にカウントされるときと、そうでないときがあります。けれど社員が遠路はるばる出張に出て、何かしらの大変な思いをしてきたことは想像に難くないですよね。

ですから社員の負担を思いやって、「お疲れさま」の労いの言葉を忘れずにかけたいですね!

社労士事務所Extension 代表・社会保険労務士 高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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