タイムレコーダーで時間管理するときの留意点

方眼ノートの上にグリーンの電卓と鉛筆が置かれている。

会社には、社員の労働時間をマネジメントする責任があります。そこでタイムレコーダーの必要性は言うまでもなく、この取扱いについてたびたびご相談を受けます。

 

多くの会社の就業規則には「始業時刻9時、終業時刻18時、うち休憩時間12時から13時の1時間」などと規定されていると思いますが、9時に職場のどこにいなければ遅刻扱いになる、とまでは定められていません。けれど具体的な規定がないからといって、毎日の勤怠管理で大きな混乱が起きているかといえば特にそんなこともなく、ごく普通に出勤が行われていると思います。

 

とはいえ毎月の給料計算でタイムカードをチェックしていると、「これは遅刻になるのか、ならないのか?」など、いざ真剣に考え始めると判断に迷うことも多いのではないでしょうか。

そこで今回は、タイムレコーダーの打刻と労働時間のカウント方法についてみていきたいと思います。

始業時刻はどこからカウントする?

コーヒーショップのカップを手に持ち、窓辺で休憩する女性社員。

会社に到着して門をくぐってから自分の作業場まで異動する時間や、会社が雑居ビルに入っている場合で自分の会社スペースまでエレベーターやビルの廊下を通行する時間は、労働時間にカウントされません。

 

また仕事のために作業着へ着替えることもあるかと思います。この更衣時間について、会社が所定の場所で作業着への着替えを義務づけている場合は、労働時間となります。一方、それが社員の自由裁量に任されている(自動車・バイク通勤で自宅から作業着を着用してきても良いなど)場合は、労働時間とカウントされません。

なお、実際の作業にかかる前に、作業場でミーティングや準備体操が行われている場合、その参加が強制されているなら労働時間となり、自由参加とされているなら労働時間にはなりません。

 

会社の玄関をくぐってから実作業にかかるまでのフローをまとめると、【図1】のようになります。

「きちんと時間管理するには、タイムレコーダーをどこに設置するといいのか?」とのご質問も多いのですが、このフローから、作業着への着替えを労働時間とカウントする必要がある場合には更衣室内に設置するといいですね。そして着替えを始める前と着替えが終わった後に打刻、というルールにする。

一方、着替えを労働時間にカウントする必要がない場合には、作業場の入り口に設置して、作業を始める前と終わった後に打刻、ということでいいと思います。

 

なお、たとえば始業時刻9時より前に打刻した場合には、給料計算をするうえで「始業時刻に間に合っている、遅刻ではない」という扱いになるのが一般的です。もしあまりに9時より前に打刻されているようなら、早朝残業命令があったのかどうかを本人やその上長に確認する必要があります。タイムカードのチェックは注意して行いましょう!

 

【図1】

※青色マスから労働時間にカウントされる

  入 門 歩 行 着替え 歩 行

ミーティング

準備体操

作 業

・所定の場所での着替え:義務

・ミーティングや体操:強制参加

――― ――― ←労働時間にカウント→

・着替え:自由裁量

・ミーティングや体操:自由参加

――― ――― ――― ―――  ―――  

終業時刻はどこまでカウントする?

終業時刻後の打合せスペース。部屋の電気が一部すでに消灯されている。

たとえばタイムカードの打刻時刻が18時20分で、終業時刻18時との間が短時間の場合には、通常は定時に仕事が終わったとして取り扱われます(月給制の社員の場合、30分程度は退勤猶予時間とされています)。

それが18時よりもだいぶ遅くに打刻されていたようなときは、会社が残業していなかったとの反証をあげない限り、その付近まで残業していたと推定されます。

 

これを「本当に残業をしていたのなら、その証明を出しなさい」と社員に責任転嫁するのは問題です。労働時間を把握する義務と責任は会社にあるからです。ですから終業時刻後も、会社は社員の労働時間マネジメントをきちんと行う必要があります。

残業命令があって仕事していたのか、単に残って私用や社員同士で雑談をしていたのか、社員がどんな事情で社内に滞在していたのかについても会社の管理が重要だといえます。

 

いずれにせよ会社にいる時間が長いと、光熱費の額は思っている以上にかさみます。けれどなんといっても心配なのは、社員の心身の健康状態です。ですから残っている社員を見かけたら、早く帰宅するよう声掛けしたいですね。

タイムレコーダーの打ち忘れにどう対応する?

オフィスのコピー機の前に立ち、資料をコピーする女性社員。

社員が肝心のタイムレコーダーを打ち忘れてしまった場合。こんなときはどう対応するべきなのでしょうか。

 

タイムレコーダーを打刻している、していないにかかわらず、実際にその日仕事をやって働いているなら、労働時間の把握・マネジメントは会社が行わなければならないことです。

ですから通常の日と同じように勤務したものとして取り扱うことになります。タイムレコーダーの打ち忘れは本人のミスだから、という理由で欠勤扱い(労働時間はゼロカウント)することはできません。

 

ただし、会社の事務を手間取らせるのは事実ですし、他の社員に悪影響を与えかねないので、何らかのペナルティーを与えることには問題ありません。不正打刻については、「会社と社員の信頼関係を破壊する道徳的不正」として、厳しい懲戒処分を認めた最高裁の事例がありますが、打ち忘れではそこまでの厳しい処分とするのは無理でしょう(実際には「訓告」「戒告」「けん責」の程度)。

 

毎日のタイムレコーダーの打刻は、社員にしては面倒かもしれません。けれど会社にとっては労働時間マネジメントに必要不可欠な行為です。打刻の状況をみて、あまりに長時間労働になっているようなら、その社員の仕事のボリューム、やり方、健康状態をしっかりみてあげる必要があることがわかります。

会社を伸ばしていくには、「質の高い仕事」「生産性の高い仕事」をしていかなければなりません。それらが実現されているのかを図る物差しとしてタイムレコーダーがある、ということを社員に伝えていくことが、打ち忘れなどのミスを防ぐ第一歩になると思います。

社労士事務所Extension 代表・社会保険労務士 高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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