私はこの仕事を始めてから丸11年になるのですが、クライアントの経営者から「高島さんって社労士らしくないですね!」と言われることがいまだに(割と)あります。
仕事を始めたばかりの頃は、「まぁまだ若葉マークだし、威厳とか貫禄がないんだな…」と思っていたのですが、12年目に突入しても言われるというのはさすがにどうなのでしょうか・・・笑 というわけで、「社労士らしい」とはどんな感じなのかを伺ってみました。
すると、「社労士さんって、よく押し付けがましいアドバイスをする気がします」との答えが返ってきました。
客観的な意見として「社労士らしさ」を詳しく聞いてみると、気付いたことがありました。それは、社労士が「法律と会社の関係」をどのように捉えているかによって、アドバイスの仕方が2パターンに分かれるということです。
2パターンの社労士のアドバイスとは
ある経営者の方にお聞きしたのは、次のようなお話でした。
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「正直なところ、社労士さんには相談しにくいことが多いように思います。ご紹介から何人かの先生にお会いしましたが、みなさんおっしゃるのは『それはしてはいけない』『本当はこうするべきだ』という言葉でした。
中小企業には致し方ない事情が色々あって、良いとは言えない今の状態になっている。本当はそのことについてじっくり相談したいんですね。
だけど今の状態が良くないことはわかっているのに、『それはダメ』と否定されると、次の言葉を続けることができませんでした。
『こうするべき』の提案も、法律的には合っているかもしれないけれど、うちの会社の事情にはフィットしていない。
『こうしなかったら知りませんよ』と言われると、せっかくのアドバイスですが、押し付けがましいな、って思ってしまいました。」
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冒頭で、社労士のアドバイスの仕方には2パターンあって、それは「法律と会社の関係」をどのように捉えているかによって異なることをお伝えしました。具体的には、次の2パターンです。
- 法律と会社を「上下関係」として捉えている(法律>会社)
- 法律と会社を「対等な関係」として捉えている(会社=法律)
ではなぜ、なぜ社労士のアドバイスは「押し付けがましい」のでしょうか?
法律と会社は「上下関係」
1のスタンスをとる社労士は、法律と会社の関係を「法律は絶対的な権威、上位の立場にあるのだから、会社はその下位の立場として従わなければならない」と考えています。
「法律は絶対的に正しく、遵守すべきもの」なので、アドバイスも当然、会社の社風、経営状態、社員のタイプなどの事情云々よりも、法律の遵守を優先させたものになります。
確かに法律は守るべきものであり、違反するとコンプライアンスの問題などいろいろ良くないことが生じます。
ですから「こうしなければならない」「こうすべきだ」といった内容になるのです。
このスタンスをとる社労士も、決して押し付けがましいことを言いたいのではなくて、「法律を守らないためにおこる良くないこと」を事前に回避できるように、との思いからのアドバイスなのです。
【図 解】 法 律
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| 従うべきです!
↓
会 社
会社と法律は「対等な関係」
一方で2のスタンスをとる社労士は、「法律は大切だけれど、会社も大切」と法律と会社を対等な関係としてみているので、両者が折り合うポイントを常に考えています。
専門家として労働法には詳しくても、会社の事情を把握しなければそのポイントは見えてきません。相談に来られた経営者との意思疎通をおろそかにすれば、実のところ法律違反になりかねないアドバイスや、もしくは会社に過重な負担を強いるアドバイスをしてしまうおそれもあります。
そこでまずは相談者の話を尊重してお聞きし、法律の内容を勘案して問題や課題の落としどころを探ることになります。
【図 解】 会 社 ⇔ 法 律
折り合うポイントはどこにある?
高島は2のスタンスから、ご相談にあたることを心がけています。会社と社員がどんな関係になるかについても考えることを重要視しています。コンサルティングのアドバイスによって、社内の人間関係が悪くなったり、いさかいが起こることのないよう、良いかたちに落ち着くことを考えます。
1もしくは2のスタンスをとる社労士の割合は、正直なところ私にはわかりませんが、冒頭の経営者の方は、高島がとるスタンスを珍しいと思われ、「社労士らしくない」との感想をお持ちになったようでした。
どちらのスタンスによるアドバイスを望まれるのか、社労士へ相談される際のご参考になればと思います。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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