「社員が常時10人以上いるなら就業規則を作らなければならない」
法律に規定されているので、みなさんよくご存じのことだと思います。
ですが、「作って終わり」になっていませんか?というのも、就業規則は単に作っただけではその効力は発生しません。
就業規則が有効となるには、合理的な労働条件を定め、その内容を社員に周知していることが必要だからです。
つまり就業規則に法改正に対応していないなど不備がある場合はもちろんですが、社員へ真摯に説明を行っていないと思わぬトラブルが発生するリスクをはらんでいます。
そこで今回は、手間暇かけた就業規則を無駄にしないため、会社としてやっておくべきことについて詳しく確認していきたいと思います。
就業規則の効力はいつ発生する?
就業規則を作成、または変更したときに、
- 社員への説明会を実施
- 社員からの意見聴取
- 社員へ周知(社内でいつでも閲覧できる状態にする)
- 労働基準監督署へ届出
というプロセスを踏むことと思います。
では、どの時点で就業規則は効力を持つのでしょうか。
これは、1)の段階で規定内容が整備されていれば、実質的に周知されているため、効力が発生したとされます。
つまり、労基署への届出がなくても、社員に説明、周知されていれば就業規則の効力が生じることになります。
ここで問題になるのが、「社員に合意を得ない不利益変更を行った場合」です。この就業規則は有効になるのでしょうか。
この場合、就業規則の変更の内容が合理的であるなら、合意を得なくても有効となります。
合理性があるかどうかの判断は、社員の不利益の程度、その必要性や相当性などによって行われ、労働基準法の所定の手続きが行われているか(労基署への届出を含む)も問われます。
届出などの手続きを守っているかは、効力の発生要件ではないけれど、合理性の判断に影響する重要ポイントといえます。
社員説明会の重要性
このように就業規則が有効となるには、社員への説明、周知が必須です。
「実質的な周知がされていなかったので就業規則の不利益変更は無効」とする判例もあります。そのポイントを以下に挙げます。
- (全体朝礼で就業規則変更の説明行ったが)議事録の作成、
- 説明文書の配布がなかった
- 就業規則変更の説明会を開催しなかった
- 就業規則に不備があった
ここから得られる教訓は、就業規則を作成・変更するときに社員説明会を開催することの大切さです。
説明会では、できれば説明文書をあらかじめ用意して配布し、終了後にはどのような説明をしたのか、具体的な内容を議事録として残しておくことをお勧めします。
不利益変更の場合はなおさら、具体的な内容(たとえば賃金や退職金の金額変更など)を隠さずにしっかり説明して、真摯に社員と向き合うことがポイントとなります。
説明会当日の心構えは
説明会の時間はその内容にもよるでしょうが、1~2時間程度、社員からの質問タイムも含めて余裕を持ってとっておきましょう。
「落ち着いて社員のために時間をとる」姿勢を見せることも大切です。
説明シナリオのポイントは、過去記事「就業規則の本当の意図を社員に伝えるには」で紹介しているので、参考にしてみてください。
制度の趣旨、背景や目的については、社員が理解しやすいように経営者自身の言葉でしっかり語ってあげましょう。社員にとって、経営者からの言葉はとても重要なのです。
専門的な法律的な内容については、社会保険労務士等の専門家を活用して、説明会への同席を依頼するのもひとつの方法です。
説明会に同席している専門家から法に沿った説明があれば、「会社は法律をちゃんと守って、自分たちのことを考えてくれているんだ(うちの会社は世間で騒がれるようなブラック企業とはちがう)」と、社員の新しい制度への不安を払しょくすることができます。
専門的なことを(専門家に)任せることで、経営者は社員へのメッセージの内容を考えることに専念できます。また、説明会の準備にかかる人事部員の負担も軽減されると思います。
経営者や幹部社員だけで負担を抱え込みすぎず、専門家など第三者の力を借りることは、説明会をうまく開催するポイントだといえるでしょう。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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