研修中の年休申請に会社がとるべき対応は

デスクの上に、メモ、ふせん、画びょう、ミニ黒板、花が行儀よく並べられている。

会社が人材育成を行う目的は、大別して2つあります。

ひとつは個人の能力を高めること。

もうひとつは組織の能力を高めること。

 

この目的のため会社は社員へ投資するのです。研修の実施もそのひとつと言えます。

 

ですから会社は受講による効果を高めるため、実施する研修のカリキュラムについて、その期間、内容、受講対象の範囲、講師など、練りに練られていることでしょう。


そんな研修の実施期間に年休を取得したい、と社員が申請してきたとしたら。

 

会社としては、どのように対応するべきなのでしょうか。今回はこのあたりについて、詳しくみていきましょう。

研修の受講は「事業の正常な運営」を妨げるか

研修会場の会議室。中央にスクリーンとホワイトボード、演台にマイク。

社員が年休取得を申請してきた場合、それによって事業の正常な運営が妨げられるときには、会社は年休取得を拒否する権利(時季変更権)があります。

 

時季変更権を行使するには、事業の内容、規模、本人の担当業務、事業活動の繁閑、予定された年休日数、他の社員の休暇との調整など様々な事情を、総合的に考えたうえでの判断が必要です。

 

受講者の範囲を特定した研修(たとえば昇進・昇格にかかる中堅社員の階層別研修など)では、その参加は他の社員では代替がきかない業務と考えられます。

 

また、昇進や昇格を視野に入れた中堅社員の階層別研修は、短期間で集中してマネージャーとしての高度な知識や技能を習得させる目的で行われています。

 

年休の取得によってその一部を欠席しては、研修の目的を十分に果たせるとは言えないでしょう。

よって「事業の正常な運営が妨げる場合」、つまり仕事が通常通りスムーズに回らないとき、と判断されるため、会社は時季変更権を行使することができます。

研修の意義や目的を社員と共有できているか

広げられたテキストから文房具のイラストが浮かび上がっている図。

一方で、そもそも会社が重視する研修期間中、「なぜ合理的な理由もなく年休取得の申請があるのか」についても考えておく必要がありそうです。

 

その研修はまさに余人をもって代えがたい業務であること、中堅社員の自覚をもって受講するものであること、昇進や昇格を見据えて会社が力を入れたカリキュラムであることなどが、十分に社員へ伝わっていないのかもしれません。

 

会社の戦略や目標は、社員が継続的に成長していくことを通じて達成されます。

ですから会社には、社員が成長する機会の提供が求められます。

 

それは実際に仕事を与えることで個人のキャリアアップの「場」を提供することかもしれませんし、人材育成のため研修を開催することかもしれません。

 

 

同時に社員個人もスキルを磨いて、自分が発揮する価値を上げる努力が求められます。

つまり、会社と社員がともに、エネルギー(時間・コスト・労力)を投資して人材価値を向上させる姿勢が欠かせないのです。

人材育成コストは経営方針によるが

会議スペースで、パソコンと資料を広げてチームの後輩たちに説明する先輩社員。

もちろん人材育成にコストを投じるかどうかは、経営方針によると思います。

 

スタートアップ時など短期間で成長を目指すなら、短いスパンで収益が出る機会を目ざとく見つけ、低コストで雇用できる人を必要に応じて有期雇用することも考えられるでしょう。

 

一方、育てた人材が生み出す価値で中長期的に渡って会社を伸ばすことを目指すのであれば、覚悟を持って働く環境を整え、働く意欲を上げるよう、人を育てる仕組みを考えなければなりません。

 

社員にしても、後輩に今までの仕事を譲って自分はワンランク上の仕事をする機会をつくるなど、日常的に自らの人材価値を高めることに取り組む必要があります。

 

そのため前述のような事態が発生したときには、会社と社員が意識を共有したパートナーシップを築けているかどうか、再確認する機会にしたいですね。

社労士事務所Extension 代表・社会保険労務士 高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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