
顧客のさまざまなニーズに応えるため、毎日忙しく、マンパワーも十分とはいえない。そんなかでは、現場で時間をかけて人を育てる余裕はない・・・そこで幹部社員や専門職の社員を中途採用する場合は当然ありうるでしょう。
採用したはいいけれど、実際の働きぶりをみてみると期待したような能力の発揮はみられず、業務への適性もどうも疑問を感じる・・・
ただでさえ人員の余裕がないのに、新しく雇い入れた幹部社員のフォローで逆に手を取られてしまう。何のために採用したのか。このままでは雇い続けるのは難しい・・・
幹部社員や専門職社員の能力不足に、どのように対応すればよいのでしょうか。今回は、とるべき会社の対応についてみていきましょう。
一般社員とは異なる扱い

終身雇用が前提の一般社員を、能力不足という理由で辞めさせるには、客観的にみて能力が著しく欠け、雇用契約の継続が難しい状況でなければなりません。
一方、幹部社員や専門職社員は一般社員の採用とは異なります。
豊富な職務経験や高度な能力、専門性に期待を寄せられ、本人もそのことを十分に自覚したうえで雇用契約を締結しています。
もちろん給料をはじめとする労働条件も、相応の優遇を受けています。
このような社員の役職や職種を変更するには、本人の個別の同意が必要とされ、会社が一方的に変更することはできません。
よって、期待された能力や適性が不足している場合、雇用を続けるのは難しいため、解雇は有効だと考えられています。
はじめに認識をすり合わせておくこと

「能力不足」とされた幹部社員や専門職社員にしてみれば、「短期間では職責を果たすことができなかっただけで、決して能力不足ではない」といった反論があるかもしれません。
けれど会社にとって、幹部社員や専門職社員を採用する理由は、彼らの知識や能力、専門性、実績などをみて、今いる人材では難しい課題や環境変化へ迅速に対応してもらえると期待があったからです。
認識の相違によるあとあとのトラブルを防ぐためにも、当初の採用段階において、着任する地位に求める職責や業務内容、アウトプットのレベルや期間について、本人としっかり話し合っておくことがポイントです。
そのうえで雇用契約に具体的な内容を盛り込んでおきましょう。
エース級社員に依存しない組織へ

採用には結構な時間や労力、コストがかかります。「高度専門人材は能力がなければ解雇すればよい」との意識で取り掛かると、それらは結局無駄になってしまいます。
解雇は最終的な対応として、あくまで「一緒に会社を伸ばしていける人材とは?」を考えてターゲット人材を追うことが大切です。
一方で、なぜ即戦力となる人材を求めなければならないのか、について考える必要もあります。
その理由のひとつとして、ベテラン社員の退職や優秀な社員の流出によって、ノウハウやスキルが社内に蓄積されていないことがあるでしょう。
個人の持つ情報を職場の財産として共有していなければ、その社員の退職により失われてしまい、会社の損失となってしまいます。
「この人でなければできない仕事」をなくして、高度な専門能力を持ったエース級社員に依存しない体制づくりはとても大切です。
誰か一人がものすごく頑張る職場では、どことなく暗黙の了解で、「それは〇〇さんの仕事」として、その領域を犯してはいけない雰囲気が漂っていることもあるのではないでしょうか。
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いざというときに肩代わりのきく組織の体制は、ピンチのときだけでなく、普段のときからもメンバーがそれぞれの実力を発揮しやすいと思います。
あるメンバーだけが指示を出して、周りのメンバーがそれに従う・・・というスタイルだと、その組織に所属するメンバーが何も考えなくなって(思考停止)しまいがちです。それで順調なうちはいいのですが、新しい発想が生まれないので、だんだん組織として停滞していってしまいます。
そこで、「ああしろ、こうしろ」といった命令形ではなく「これはどう思う?」「これをお願いできる?」といった質問&お願い形式でコミュニケーションをとることは、組織の停滞を予防する方法のひとつです。相互的なコミュニケーションがとれる組織、チーム作りに向かっていきたいですね。


■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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