「就業規則を作成すると、この内容はいつまでもつのかな?」
”就業規則の賞味期限”(?)を疑問に思われたことはありませんか?
前回の改訂日付が20年以上前の平成ヒトケタ年、ガリ版刷りのインクが褪せた年代物の就業規則にお目にかかることがありますが、長年の放置は会社にデメリットをもたらしかねません。
なぜなら、就業規則は社員のやる気と行動を導き、会社を伸ばすための指針だからです。景気の波があるなかで社員に求める具体的な行動が、何十年前とまったく同じであるはずがないので、タイミングを逃さずに見直すことがとても重要です。
そこで今回は、就業規則を見直すべき3つのタイミングについて詳しく確認していきたいと思います。
見直しのタイミング1:法改正があるとき
社員の労働条件に関わる労働法の改正があれば、それに伴い就業規則も変更する必要があります。
就業規則の内容すべてに関わる法律が同時に変わることはないですから、法改正のあった部分を見直せばOKです。
「法改正に伴って就業規則の条文を変更した」と社員さんにも説明しやすく、理解も得られやすいですね。
「会社は世の中の流れ、コンプライアンスにきちんと対応してくれているんだ」と社員の安心にもつながるでしょう。
その他には、世の中の動きや流れに合わせて、見直さなければならないこともあるでしょう。
たとえば、ストレスフルな現代社会でよく問題となる「ハラスメントやメンタルヘルスの防止」に関する条文の追加をする、といったケースです。
見直しのタイミング2:経営の方向性を見直すとき
世の中の経済状況や業界動向に変化があって、たとえば事業所の増加や縮小、また合併、会社分割、事業譲渡などの組織再編があるかもしれません。
ビジネスが拡大して、社員の数が増えたり、部署やチーム、グループが新設されたりと、体制が今までとガラッと変わることもあるでしょう。
このようなときには、経営方針や経営戦略が大きく見直されるタイミングだと思います。
それに伴って、社員の労働条件を変更しなければ、取引先との関係性の変化や事業内容の変更には対応できない可能性は大いにあります。つまり、連動して就業規則も変える必要がある、ということです。
そんな状況が来年に来るのか、それとも3年後5年後なのかはそれぞれの企業の事情によって異なるでしょう。ですが経営者、幹部社員の方々におかれましては、今後どのように会社を経営していくのかについて、中期経営計画などでお考えのことだと思います。
ですからおおよそそのスパン(大体3~5年)で、「この社内体制(社員の労働環境)のままでうまく事業は回るのだろうか?」と、資金繰り面とともにヒトの体制をも振り返る機会にすると、会社の成長速度も変わってきます。
見直しのタイミング3:社内の管理体制を見直すとき
「社内でトラブルがあるたびに就業規則を整備しているんです」
とのお話を伺うことがあります。
たとえば個人情報の流失が発覚し、今後のリスク管理のために新しい規程を整備する必要に迫られることもあるかもしれません。
トラブルの発生を教訓に、今後の発生への予防や対応ができる内容に見直して、ピンチをチャンスとして捉えたいですよね。
ただし、それは表面的に就業規則を変えればよいわけではありません。大切なのは社内の管理体制そのものを見直すことです。
見直した社内の管理体制を就業規則へ反映させるため、関連する条文を変更もしくは追加するプロセスを踏むことです。
社員にも「こんなトラブルがあり、対策のため社内体制を見直した。関係する就業規則の条文もこのように変更した」という説明なら理解を得やすいですね。社員にしっかり説明することで、普段の自らの行動を省みてもらう機会にもしたいですね。
就業規則はその内容を社員に周知しなければ効力がありません。つまり、経営者がこっそり就業規則の内容を変えて「これで大丈夫だ!」と思っていても、その手間に見合った効果は得られませんから注意が必要です。
まとめ
就業規則を見直すタイミングは次のように大別して3つあります。
- 法改正があるとき
- 経営の方向性を見直すとき
- 社内の管理体制を見直すとき
長い間放置して、会社の伸びに関わってくる就業規則が埃をかぶることのないよう、適切なタイミングでぜひ見直したいですね。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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