退職金を支給する目的を答えることができますか?

結婚式場で青空にあがるいろとりどりのバルーン。

就業規則や人事制度のコンサルティングをしていると、退職金についての質問もよくいただきます。

よくいただくのは、次のような内容です。

 

「法律で退職金を支給しなければいけないと決まっているのですか?」

「どのくらい払うと、世間並ですか?」

「退職金制度がある、と求人広告に載せないと、人材を獲得するのに不利になるでしょうか?」

 

中小企業では、「人材マネジメント」と「財務」というふたつの側面に留意しながら退職金制度について考える必要があります。

 

いちばん大切なのは、自社にとってどういった目的で退職金制度を設けるのか?という目的を明確にすることです。

今回は、このあたりについて詳しくみていきたいと思います。

退職金の支給は法律で決められている?

 

まず退職金の支給は、法律で義務づけられているわけではありません。

退職金制度がない会社があっても、決して法律に反するわけではありません。ただし、就業規則に退職金制度があることが規定されていると、会社には退職金の支払い義務が発生することになります。

 

こういったお話をしていると、「退職金規程はうちの会社に存在しないと思います、たぶん・・・」とおっしゃっておられたのが、後日になって「実は、退職金規程がありました!今になって初めて読みました」といったケースも時にはあります。

みなさんの会社ではいかがでしょうか?

 

会社に将来の支払い義務があるということで、退職金は社員への債務となります。企業経営にとっての負担は決して少なくありません。

退職金資産のデータと電卓。ペンとメモ、ふせん。

ですから大企業の水準や世間の相場よりも、財務面を考えて、自社の支払能力を優先させることがポイントです。

 

採用活動についても、今の若い世代は「将来の退職金よりも、いま現在の手取りを多くもらいたい」と考える人も一定の割合で存在します。そうすると、そのように考える社員が多い企業における人材マネジメントでは、退職金を社員のモチベーションに、と考えていたとしても実際の効果は高くないのかもしれません。

よって繰り返しになりますが、自社の退職金制度の目的は何かについてはっきりさせることが大切です

退職金の目的がいちばん大事

マイホームを落書きする男性社員の手。

たとえば退職金の目的として以下のように考えるとしたら、

  1. 社員に長く働いてほしい
  2. 社員のインセンティブにしたい(励みにしてもらいたい)
  3. 採用面で有利に働かせたい

それぞれで、退職金制度の設計は変わってきます。

 

1の場合、「長く働くことに価値をおく」ことをコンセプトとして制度を設計するといいですね。たとえば勤続年数によって支払金額が増える、もしくは毎月の掛金が増える、といったイメージです。「勤続年数」を基準に将来の退職金の支給額が決まることになります。

 

2の場合、自社の評価制度と連動して制度を設計することが考えられます。たとえば資格等級や役職別で支払金額が増える、もしくは毎月の掛金が増える、といったイメージです。「資格等級や役職(会社でのポジション)」基準に、将来の退職金の支給額が決まることになります。

 

3の場合、先にも書きましたが「評価の分は将来よりも今還元してほしい」と考える人が一定数いる限り、果たして有効なのかは検討する余地がありそうです。将来的に退職金で報いるよりも、現時点における短期間の働きぶり、頑張ったことを賞与や一時金で還元することを考えるのもひとつの方法です。求人広告では「賞与や一時金で今の頑張りを還元する」旨をアピールすることになります。

就業規則で退職金の支払い義務が発生する

クレイアートで作成した夢のマイホーム。

前段の通り、社員に退職金を支払うことは法律で義務づけられているわけではありません。けれど就業規則に退職金を支払う旨が規定されていれば、それは社員との約束として支払わなければなりません。退職金支払いの義務は就業規則(退職金規程)によって生じるのです。

 

その退職金規程も制度の目的によって内容がかわってくるのは、前述の通りです。

「退職金については、中退共にはいっています」「生命保険をかけています」と伺うことも多いですが、それは退職金の原資をどのような方法や手段で積み立てているか?という「お金の貯め方」のことを指しているだけです。

 

 肝心なのは、退職金規程でどのように規定されているか?です。

具体的にはその目的、支払金額もしくは掛金の額の計算方法、社員と約束しているのは将来の支払金額なのか毎月の掛金の額を約束しているのか、といったことです。

 

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退職金制度では、支給する目的を自社ではどのように考えているのか、ということが大切です。

その考え方は他社と違っていても、もちろん構いません。

「人事」と「財務」について念頭に置きながら、会社を伸ばすため自社では退職金制度をどう位置付けるのかをしっかり考えていきたいですね。

社労士事務所Extension 代表・社会保険労務士 高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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