接待や夜間対応は労働時間になるか?

イタリアンディナーで接待。ボロネーゼ、ボトルワイン、ワインの入ったグラス。

業態に関わらず、日常業務のなかで顧客と直接やりとりする機会は多いことでしょう。

 顧客とのやりとりの中でサービスの改善点を発見→顧客に喜んでもらえるよう工夫する→社員が一人前に育つ。

このように、顧客が商品開発や人材育成へ与える影響は大きいため、顧客満足に価値を置いている企業も多いと思われます。

 

顧客と継続的な関係性をつくるために、「定期的なご接待」や「いつでもクイックレスポンス」社の方針に据えることもあるでしょう。

とはいえ、マネジメントの立場からすると、「この顧客対応は労働時間になるのか?」と判断に迷うことはありませんか?

 

そこで今回は、コンサルティングの中でよくご相談を受ける顧客対応にまつわる次の2点について、詳しく確認していきましょう。

  1. 接待での飲食や宴会はどう考える?
  2. 携帯電話を常時ONにさせておくのはOK?

接待での飲食や宴会はどう考える?

色とりどりのタパス料理。ボトルワイン。赤ワインの入ったグラス。

取引先の顧客を接待して行う飲食や宴会。これらが労働時間にあたるかどうかは、その飲食の主な目的によって決まります。

 

1)飲食自体が目的の場合

接待や宴会の目的が、取引先との親睦やコミュニケーションを深めるための「おつきあい」である場合、たとえ新商品のアピールなど仕事に関するトピックスが話題に上っても、これは業務遂行にかかる時間と認められず労働時間になりません。

 

2)飲食が副次的に伴う場合

たとえば上司の指示で、得意先の開店祝いや通夜に出席するとき。そこで飲食が行われても、それは儀礼的な意味合いが強く、飲食がメインの目的ではありません。よってこれは労働時間となります。

 

またホテルのラウンジで取引先と交渉中、夕食の時間になったのでブレイクタイムに食事をし、その後引き続いて交渉にあたるとき。この場合、食事の前後の時間は労働時間となります。

 

ただしこれらは事業場外で活動する時間であり、その場の雰囲気で時間が長くなったり短くなったりと予測不可能です。よって「会社の具体的な指揮監督や時間管理が及ばず、労働時間のカウントが困難である」として、実務上は事業場外のみなし労働時間として取り扱われることが多いと思います。

(事業場外のみなし労働時間についてはこちら>>過去記事「営業社員の労働時間は業務の量と質を重視する」)

携帯電話を常時ONにさせておくのはOK?

スマートフォンで会社からの指示メールを確認する男性社員。

システム会社など業種によっては、営業時間の終了後や休日に顧客から問い合せの電話がかかってくることも考えられます。

そこで営業担当に対応させるため、会社の携帯電話を貸与して、電源を常時ONにしておくように指示する場合、これは仕事(労働時間)と認められるのでしょうか。

 

参考になるのが「宿日直勤務」の例です。

 

宿日直勤務とは、会社の命令で事業場内に拘束されて緊急電話の受理、外来者の対応、盗難の予防などの特殊業務に従事するものです。夜間にわたり宿泊が必要なものを宿直といい、勤務内容は宿直と同じですが、その時間帯が主に昼間であるものを日直といいます。

 

この勤務形態は、週40時間、1日8時間という労働時間の規制が適用除外となります(労働基準監督署の許可が必要です)。なぜなら「常態としてほとんど働く必要のない」勤務と考えられるからです。

 

場所的な拘束がないことが宿日直勤務とは異なりますが、携帯電話がかかってきたら対応しなければならないという点で、類似の状況といえます。ですから、問い合わせコールの頻度が少なく、常態としてほとんど働く必要はないといえる程度なら、労働時間にはあたらないでしょう。ただし注意が必要です。宿日直勤務の許可条件は、次のようになっています。

 

  1. 定時的巡視、緊急の文書又は電話の収受、非常事態発生の準備等が目的のものに限定
  2. 宿直、日直とも相当の手当を支給すること
  3. 宿日直の回数が、頻繁にわたるものはNG(原則として、日直については月1回、宿直については週1回を限度)
  4. 宿直にあたっては睡眠施設の整備をきちんとしていること

上記の1~4の要件を勘案すると、携帯電話の常時ONを指示するのは、週1回程度にとどめ、相当の手当を支払うことになるでしょう。

 

問い合わせコールの頻度によっては労働時間となりますから、営業担当から顧客のタイプや問い合せ内容など状況を詳しく聞き、対応についてあらかじめ打ち合わせておくことが現場のマネジメント上大切です。

顧客対応の方針を共有しておくこと

オフィスのビジネスファン。

顧客に喜ばれるサービスを提供するには、顧客のことを深く知り、彼ら自身がまだ認識していない需要を見出すことが大切です。

接待飲食で懇親を深めたり、クイックレスポンスを心がけるのも、その目的を達成するための手段にすぎません。

 

けれどたとえば「毎日21時に電話が欲しい」というオーダーが顧客からあった場合。この取引先を失えばえらいことになる、と思っている担当の社員なら、自宅で対応するしかない、と考えるかもしれません。

 

そこで前段の繰り返しになりますが、現場の管理職とメンバーの間で担当顧客への対応の方針について共有しておくことが大切です。

たとえば、下記のような対応の仕方が考えられます。

  • 今は顧客と信頼関係を構築することを優先する時期なので、残業申請書を出して顧客の要望に対応してほしい。ただ、どれだけ時間を費やすことになったのか、翌朝必ず報告してほしい。場合よっては対応の仕方を改めて考える必要がある。
  • 「もう少し早い時間に対応させていただきたい」と先方にお願いする
  • どうしてもこちらの対応(早い時間の対応)に相手が応じてくれないのなら、その顧客はあきらめる

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これらのような方針が分かれば、メンバーも納得して心置きなく顧客対応にあたることができます。担当者レベルで対応に悩んで抱え込まずに、上司に相談することができるからです。

仕事で大切にしたいことは、「顧客に振り回される」ことではありません。たったひとりの顧客からでもその背後にある大きなマーケットのニーズをくみ取ることです。ここから逸れないことが大切だと思います。

 

労働時間になる、ならないといった問題を切り口に、仕事のやり方について管理職とメンバーのコミュニケーションを深める機会にしたいですね。

アドレス帳と万年筆。顧客リスト。

社労士事務所Extension 代表・社会保険労務士 高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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