接待や夜間対応は労働時間になるか?

商談中のビジネスマン2人。

日本ではサービス産業のGDP、雇用のシェアは7割程度を占めています。これを言い換えると、働いている人のなかで顧客と直接やりとりする人の割合が高いということになります。

 

顧客とのやりとりの中で、サービスの改善点が発見される。どうすれば顧客に喜んでもらえるかを考えることで、営業パーソンが一人前に育つ。このように顧客が商品開発や人材育成へ与える影響は大きいため、顧客満足に価値を置いている企業も多いと思います。

 

そこで継続的な関係性を構築するために、会社の方針として「接待」を行ったり、「問い合せには即回答」とすることもあるでしょう。

とはいえそんな顧客対応について、メンバーのマネジメントを行う立場からすると、「これは仕事(労働時間)と言えるのだろうか?」と判断に迷うこともあるのではないでしょうか。私がよくご相談を受けるのは、営業パーソンの顧客対応に関する次の2点。

  1. 接待での飲食や宴会はどう考える?
  2. 携帯電話を常時ONにさせておくのはOK?

今回はこれらを確認していきましょう!

接待での飲食や宴会はどう考える?

接待宴会の料理とお酒が並んでいる。刺身や焼き魚、小鍋料理。

取引先の顧客を接待して行う飲食や宴会。これらが仕事(労働時間)にあたるかどうかは、その飲食の主な目的によって決まります。

1)飲食自体が目的の場合

接待や宴会の目的が、取引先との親睦やコミュニケーションを深めるための「おつきあい」である場合、たとえ新商品のアピールなど仕事に関するトピックスが話題に上っても、これは業務遂行にかかる時間と認められず労働時間になりません。

 

2)飲食が副次的に伴う場合

たとえば上司の指示で、得意先の開店祝いや通夜に出席するとき。そこで飲食が行われても、それは儀礼的な意味合いが強く、飲食がメインの目的ではありません。よってこれは労働時間となります。

 

またホテルのラウンジで取引先と交渉中、夕食の時間になったのでブレイクタイムに食事をし、その後引き続いて交渉にあたるとき。この場合、食事の前後の時間は労働時間となります。

 

ただしこれらは事業場外で活動する時間であり、その場の雰囲気で時間が長くなったり短くなったりと予測不可能です。よって「会社の具体的な指揮監督や時間管理が及ばず、労働時間のカウントが困難である」として、実務上は事業場外のみなし労働時間として取り扱われることが多いと思います。

(事業場外のみなし労働時間についてはこちら>>過去記事「営業社員の労働時間は業務の量と質を重視する」)

携帯電話を常時ONにさせておくのはOK?

スマートフォンで会社からの指示メールを確認する男性社員。

システム会社など業種によっては、営業時間の終了後や休日に顧客から問い合せの電話がかかってくることがあるかもしれません。そこで営業担当に対応させるため、会社の携帯電話を貸与して、電源を常時ONにしておくように指示する場合。これは仕事(労働時間)と認められるのかどうか。参考になるのが「宿日直勤務」の例です。

 

宿日直勤務とは、会社の命令で事業場内に拘束されて緊急電話の受理、外来者の対応、盗難の予防などの特殊業務に従事するものです。夜間にわたり宿泊が必要なものを宿直といい、勤務内容は宿直と同じですが、その時間帯が主に昼間であるものを日直といいます。

この勤務形態は、週40時間、1日8時間という労働時間の規制が適用除外となります(労働基準監督署の許可が必要です)。なぜなら「常態としてほとんど働く必要のない」勤務と考えられるからです。

 

場所的な拘束がないことが宿日直勤務とは異なりますが、携帯電話がかかってきたら対応しなければならないという点で、類似の状況といえます。ですから、問い合わせコールの頻度が少なく、常態としてほとんど働く必要はないといえる程度なら、労働時間にはあたらないでしょう。ただし注意が必要です。宿日直勤務の許可条件は、次のようになっています。

  1. 定時的巡視、緊急の文書又は電話の収受、非常事態発生の準備等が目的のものに限定
  2. 宿直、日直とも相当の手当を支給すること
  3. 宿日直の回数が、頻繁にわたるものはNG(原則として、日直については月1回、宿直については週1回を限度)
  4. 宿直にあたっては睡眠施設の整備をきちんとしていること

これらを勘案すると、携帯電話の常時ONを指示するのは、週1回程度にとどめ、相当の手当を支払うことになるでしょう。

問い合わせコールの頻度によっては労働時間となりますから、営業担当から顧客のタイプや問い合せ内容など状況を詳しく聞き、対応についてあらかじめ打ち合わせておくことが現場のマネジメント上大切です。

顧客対応の方針を共有しておくこと

笑顔で顧客からの電話応対を行う女性社員。

最高のサービスを提供するには、顧客のことを深く知り、彼ら自身がまだ認識していない需要を見出すことが大切です。接待飲食で懇親を深めたり、クイックレスポンスを心がけるのもそのための手段です。

 

けれどたとえば「毎日21時に電話が欲しい」というオーダーが顧客からあった場合。この取引先を失えば大変だと思うと、担当の営業パーソンは自宅で対応するしかないと考えるかもしれません。

そこで前段の繰り返しになりますが、現場のマネジャーとメンバーの間で担当顧客への対応の方針を話し合っておくことが大切です。

  • 今は顧客と信頼関係を構築することを優先する時期なので、残業申請書を出して対応してほしい
  • 「もう少し早い時間にさせていただきたい」と先方にお願いする
  • どうしても無理ならその顧客はあきらめる

このような方針が分かれば、メンバーも納得して心置きなく顧客対応にあたることができます。大切なのは、ひとりの顧客からその背後にあるマーケットのニーズをくみ取ることです。労働時間になる、ならないといった問題を切り口に、現場のマネジャーとメンバーのコミュニケーションを深める機会にしたいですね。

社労士事務所Extension 代表・社会保険労務士 高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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