12月に入り、そろそろお得意様に挨拶回りをされる企業も多いのではないでしょうか。
年末の挨拶回りに営業車で出かけるとき、特に運転者には盗難防止のため、車両を監視する義務が生じます。もし、社員が管理を怠って社有車を盗まれでもしたら大変だからです。(盗難車両により交通事故が起きた場合、車の所有者である会社は多大な損害を被るおそれアリ)。
この場合、人材マネジメントの観点から問題となるのは、盗難防止などのために車両を監視している時間が休憩時間といえるかどうかです。
そこで今回は、年末の挨拶回りなど営業車での外出で、車両の監視義務と休憩時間の関係をどう考えるとよいのかについて、詳しく確認していきましょう。
休憩時間として判断するポイント
休憩時間は、社員の自由に利用させなければなりません(休憩時間の自由利用の原則)。
それに対して労働時間とは、会社の指揮命令下にあって仕事をしている時間(実作業時間)と待機している時間(手待ち時間)をいいます。
休憩時間なのか、それとも労働時間なのかの区別は、その拘束性の程度がポイントとなります。拘束性の強弱については、次の2点をあわせて判断する必要があります。
- 場所的な拘束
- 職務内容による拘束
1)の場所的な拘束については、車両の監視義務が一定の場所にとどまっていなければならないものなのかどうかが問題です。たとえば、ある駐車場に駐車させておいて、ときどき監視する程度であって、あとは自由でOKというのなら、場所的な拘束の点は問題になりません。
けれど、駐車場がないときに路上に駐車させて、車の中にとどまっていなければならないとか、車両から常に目をはなしてはならないといった場合には、場所的な拘束が課せられていることになります。
2)の職務内容による拘束については、車両監視の方法が厳しく決められていてそれを怠るとペナルティーなどの不利益処分の対処になっている場合には、拘束力が強いと考えられます。したがって労働時間性も強くなります。
一方、それが単に訓示的なものであって「なるべく監視してほしい」という程度であって、社員の裁量にまかされているのであれば、法的な拘束力はなく労働時間とは認められないことになります。
具体的な実態に即して判断すること
いずれにせよ、車両の管理・監視の実態が具体的にどうなっているかによって判断しなければなりません。
厚生労働省では次のように考えられています。
- 運転者は事業場外においては一般に車両の保管責任をもつもの
- とくに会社から車両の損傷防止のために車両から目をはなすことが禁止され、命令されていない限り、社員自らの判断で安全か否かを判断するのが通常である
- たとえば、ゴルフ場などでの駐車時間は車両から離れうる状態にあると考えられる
よって、車両から遠くはなれてすべての管理責任を放棄したりすることを禁止するのであって、実際にはそれ以上の監視責任を負わせていない場合は、仕事から解放されていると考えられるので、休憩時間にあたります。この程度の拘束は休憩時間の自由利用の原則に反しないことになります。
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労基法では休憩時間について、「労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合には少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない」と定めています。
とはいえ、労基法の定める労働条件は最低限のものです。年末の挨拶回りは、スケジュールもタイトで慌ただしいもの。「車両をみている間に昼食も食べられるだろう(労働時間ではなく休憩時間なのだから)」というのももっともですが、いくら法律上1時間でよいからといっても、人材マネジメント上必要があれば、それに応じて適宜与えるべきなのはもちろんです。
挨拶回りは、そもそも取引先や営業先に一年の感謝の気持ちを伝えるためのものです。もし、社員の心の余裕がければ、雑な応対となってしまい、好印象を持ってもらうことは期待できませんよね。
そこで、仕事の合間にきちんと休憩をとってもらえるよう、マネジメントを工夫したいですね。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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