「トラブルが発生したら、「初動対応」VS「残業時間の上限規制」の間で現場はパニックになりそう、どうすればいいの?(;゚Д゚)」
時間外労働や休日労働をさせる場合は、36協定の締結と労基署への届け出が必要ですが、36協定を結んだ場合でも時間外労働の上限規制があります。
そこで労基法には例外として、災害等による臨時の必要がある場合には行政官庁の許可を受けて時間外・休日労働の上限規制を解除する規定があるのですが、働き方改革関連の法改正によって「行政官庁の許可が下りる新基準」が示されました。
そこで今回は、災害等による臨時の必要がある場合に残業が許可される新しい基準はどういうものか、詳しく確認していきたいと思います。
非常災害などによる時間外労働・休日労働
「マスクや消毒液の増産に忙しい会社、コロナ対策のためにとてもありがたいけれど、残業時間の上限規制は大丈夫なのかな?」・・・新型コロナウイルス流行の初期、マスクや消毒液の不足に対応する企業さんに感謝の気持ちとともに心配に思われた経営者、人事・総務担当者の方もいらっしゃったようです。
労基法では、時間外・休日労働が可能な場合について36協定による場合のほか、災害等による臨時の必要がある場合も認めています。
つまり、災害、緊急、不可抗力その他客観的に避けられない場合において、行政官庁の事前の許可(または事後の承認)を受けて、法定労働時間等の制限を解除する規定が労基法には設けられています。
ですが、現実にはこの規定による時間外労働等はあまり活用されてきませんでした(←従来は36協定さえ締結して届け出ていれば法律上の制限がなかったので)が、働き方改革関連の法改正によって時間外労働の上限規制ができたことに伴い、その配慮として災害等による臨時の必要がある場合に残業が許可される新しい基準が示されることになりました。
(新型コロナウイルスの感染・蔓延を防ぐために必要なマスクや消毒液等を緊急に増産する業務についても、原則としてこの「新しい基準」に該当するものと考えられています。)
非常災害など残業が許可される「新しい基準」とは
災害等による臨時の必要がある場合に残業が許可される新しい基準は、おおむね次のとおりですが、厳格に運用すべきものとされています。
経営上の必要性によるものや恒常的なものについては認められず、36協定の締結、シフト制の導入、人員を増やすことなどで対応すべきものだと考えられています。
1.地震、津波、風水害、雪害、爆発、火災等の災害発生への対応(差し迫った恐れがある場合における事前の対応を含む)
2.緊急な人命、公益に関する用務の発生への対応
(例)災害その他避けることのできない事由により被害を受けた電気、ガス、水道等のライフラインや安全な道路交通の早期復旧のための対応、大規模なリコール対応
3.事業の運営を不可能とさせるような突発的事由への対応
(例)サーバーへの攻撃によるシステムダウンへの対応
※通常予見される部分的な修理、定期的な保安は認められないので注意
上記の許可基準はあくまでも例示であって限定列挙(これしかダメ)ではありません。これら以外の事案についても対象となることもありえます。たとえば、職場の総務部員が上記の事由に対応する社員のために食事や寝具の準備をする場合なども対象となります。
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「災害等の事由に該当する」と判断して時間外・休日労働で対応業務を行った後、行政官庁の許可が下りなかった場合、「時間外・休日労働違反になるの?」と思われがちですが、そうではありません。
こういった場合、「行政官庁はその時間に相当する休憩または休日を与えなさい、と命令できる」ものとされています。
なお、このとき割増賃金はすでに支払い済みであるため、代休付与命令による休憩または休日は労基法第26条(休業手当)に規定する「使用者の責めに帰すべき休業」にはあたりません。
■この記事を書いた人■
社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ
「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。
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