シミュレーションで賃金制度を決めて後悔する会社の特徴

円グラフや折れ線グラフが示されたビジネス資料のうえに、電卓、赤ボールペン、黒ボールペンが置かれている。

前回ここ最近の記事では、給料の高さによらない会社の価値や魅力についてお伝えしてきましたが、もちろんズバリ賃金制度そのものについてのご相談をお受けすることもあります。

 

そこでよくお聞きするのは次のような内容です。

「以前にも他の社労士さんやコンサルタントに相談して、賃金改定のシミュレーションをたくさん出してもらったが、どれにすればいいのか決め手がわからなかった」

「昇給ピッチの計算方法やその条件について説明を受けたが、現実感がなかった」

「ものすごく難しい数学的な式で理解できなかった」

 

会社のこだわりポイントや今後の方向性が明確にされないまま、テクニカルな試算結果の検討を行っても現実的な納得感は湧きませんし、どの試算結果がいいかなんて選べませんよね。

数学的な式を当てはめたシミュレーションもさることながら、会社のこだわりや方向性を考えずに賃金制度をつくることはできません。

今後の方向性から現実的なプランを

青空のもとに3車線を示す道路標識。

賃金制度を考える目的には、将来の見通しを示して社員に安心してもらうことがあります。

そのため、制度は運用しやすくシンプルなことが大切です。そして中小企業であれば資金繰りとの兼ね合いも考えなければなりません。現在の資金繰りの状況をみながら今後の方向性を考えないと、現実的な制度をつくるのは難しくなります。

たとえば現状が次のA、B、Cのいずれかにあるなら、今後の方向性もそれぞれ違ってくるでしょう。

 

A)事業の拡大局面にある

B)事業の成長は横ばい傾向

C)業績が低迷している

 

A)のように顧客を大量に獲得しなければならない時期で、ビジネスモデル的にあとあと回収できる見込みがあるので多くの優秀な人材を採用したい、といった場合。たとえ一時的には赤字になっても、多少の背伸びをした給料体系も考えられるかもしれません。

 

B)の場合、限られた原資をどのように配分するかを考えることになります。職責が重い人とそうでない人をメリハリのある処遇にしたい、ということなら、前者には高い報酬で処遇してその分後者には抑えて処遇する、ということも考えられますね。

 

C)では、努力しても当面は改善が見込まれないのなら、総額人件費を抑える方向になるでしょう。無理をするとリスクを背負うことになります。

人件費の配分をどう考えるか

ミニチュアハウスの模型とミニカー。傍らに一万円札と電卓。

前述のように今後の方向性が決まれば、人件費をどのように配分すればよいかを考えることになります。

社員のライフプランにおいて、どのタイミングで厚く配分すると、社員に会社への安心感を持ってもらえて、また働きやすくなるのか。会社のこだわりポイントと言えます。

たとえば、入社時と退職時を考えてみるとわかりやすいでしょう。

つまり初任給と退職金をどう考えるのか。単純に考えると次の3パターンになります。

 

I)初任給、退職金ともに世間並

Ⅱ)初任給は世間よりも低いが、退職金は世間よりも高い

Ⅲ)初任給は世間よりも高いが、退職金は世間よりも低い(もしくはゼロ)

 

Ⅰの場合、世間の動向に気を配っておく必要があります。特に初任給は、地域や業界の相場との比較を計っておかなければ、採用市場で競合と人材のとりあいになる可能性もありますね。

 

Ⅱであれば、社員に説明して会社のこだわりや考え方を理解してもらう必要があるでしょう。通常は目先の生活の源泉が大事で、将来の退職金にまで考えが及ばないからです。

 

Ⅲの場合も、社員への説明がなければ「冷たい会社では?」「最初の数年で使い捨てにするつもり?」とあらぬ誤解を与えてしまうかもしれません。

 

ⅠからⅢのどれをとれば正解、ということではなく、あくまで会社がどのように考えるのかが大切です。それによって人件費の配分が変わるので、シミュレーションによる賃金カーブも変わってくるのです。会社の方針が先決です。

賞与と退職金をどう考えるか

パソコンのキーボードのうえに電卓、ミニチュアハウスの模型、マーガレットの花が一輪。

前述のように、中小企業は資金繰りとの兼ね合いを勘案しなければならないので、総額人件費で考える必要があります。つまり月給をどうするか、だけではなく賞与や退職金も含めて、「どのように原資を配分すれば社員はもっとやる気が出るのか?」を考えることになります。

 

特に賞与と退職金では、貢献度を報いたいとの想いから支給されると思います。どの企業でも当然、「会社への貢献度が高い人に多く支給されるような制度にしたい」と思われるでしょう。確かに短期的な頑張りや貢献を報いる手段として、賞与は最適だと思います。でも退職金はどうでしょうか。

「本人の頑張りは賞与で報いているし、昇給にも差をつけている。もうそれだけで十分に差をつけているので、退職金については、在職年数の差はあるにせよ貢献度には差をつけず、一律に支給したい」と考える企業も中にはあります。

 

これもその会社のこだわりや考え方、方針によるものです。これらが明確にあってこそ、制度全体の設計ができるのです。

「正しさ」や「世間の基準」ではなく、みなさんの会社でのこだわりポイントは何でしょうか?

社労士事務所Extension 代表・社会保険労務士 高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

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