ゲリラ豪雨で帰りが遅くなった社員の労働時間はどうなる?

大雨の中で傘をさす。

夏になると、梅雨や台風の影響でしばしば大雨になります。

ゲリラ豪雨の影響で立ち往生となり、商品の配達に出かけた社員の帰社がいつもより遅く、終業時刻をとっくに過ぎていたとき。

この場合、配達員の社員の労働時間をどうカウントすればいいのでしょうか。

 

このような、帰社が遅くなった社員の労働時間についての質問をよくいただきます。お聞きしていると、営業社員の事業場外みなし労働時間の場合とごっちゃになっていることも多いようです。

 

またゲリラ豪雨などではなく、会社に戻る途中で私用を済ませていたがためにどうやら遅くなったようだ・・・という場合はどうカウントするといいのか悩ましい・・・とのお話を伺うこともあります。

 

そこで今回は、

  • ゲリラ豪雨等による交通渋滞、交通事故、道に迷うなどで遅くなった場合
  • 配達や帰社の途中、私用やサボリで遅くなったと推定される場合

これらのケースで、配達担当の社員の労働時間をどうカウントするのかについて、みていきたいと思います。

交通渋滞などで遅くなった場合

大雨で道路が混雑している。

「社員が事業場外で業務に従事した場合で、労働時間の算定が難しいときは、所定労働時間働いたものとみなす」というのは、働いているときと、そうでないときが断続的に繰り返されるなど、担当する職務の裁量性が高い社員の場合です。

 

一般的に、セールスなどの営業社員がこれにあたります。けれど商品などの配達員で、会社の指示命令により配達先に商品を配達する場合は、これには該当しません。

 

配達業務はもちろん、配達先へ商品を届ける仕事ですから「事業場外で業務に従事」という点では同じですが、業務自体は会社の指示による配達作業です。配達伝票による具体的な指示どおりに配達しなければなりません。

 

原則として出発から帰社まで会社の命令に基づいており、裁量性はなく拘束されて配達作業を行っているので、「労働時間の算定が難しいとき」にはあたりません。出発から帰社までが労働時間となります。

 

たとえば、スーパーの店員がお客さんの注文によって食料品を配達する場合、目的地までの食料品の配達時間はもちろんのこと、それを届けて帰店し、その報告を行うまでが一連の業務として(指示された休憩時間を除いて)労働時間にカウントされます。

 

ですから、交通渋滞、交通事故、道に迷うなどのトラブルで遅くなり、終業時刻を過ぎて会社(店舗)に帰ってきた場合に、定時に就業したものとして取り扱うことはできません。

私用やサボリで遅くなったと推定される場合

喫茶店でアイスコーヒーを飲んで一服。

前段のように配達の仕事は、会社の指揮命令のもとで行われるものです。ですから、配達の途中で勝手に喫茶店に入ったり、ネットカフェで時間をつぶしたりすることは業務命令に違反する行為です。

 

そこで、このような行動のために帰社するのが遅くなった場合でも、実際に戻ってきた時間をもって労働時間をカウントすると、業務命令に違反する時間も労働時間としてカウントするのか?という疑問が出てきますよね。

この場合、考え方には2パターンあります。 

  1. 業務命令に違反して、サボっている時間は労働時間ではない
  2. 喫茶店などでサボっているのは、会社の指導・監督の問題であって懲戒処分としての対応はできても、その時間を休憩時間のように労働時間から除くことはできない

1)は、無断で喫茶店に立ち寄るなど仕事をサボった時間は、社員自らの意思で働かなかった時間なので、労働時間としてカウントしない、という考え方です。労基法では実労働時間主義をとっているからです。

 

2)は、労働時間中に私用を勝手に済ますといった行為は、労働義務の不履行として相応の懲戒処分にすることはできるが、直ちにその時間を休憩時間と同様に扱うかは実態による、という考え方です。私用などで仕事をサボると直ちに労働時間にはカウントされない、となると社員にとって不利益が大きくなるからです。

 

実務上は、この両方の考え方を考慮して、次のように取扱うことが妥当だと考えられます。

  • 明らかに会社の指揮監督下から離脱している場合には、労働時間にカウントしないが、それ以外は労働時間として取り扱う
  • 社員が虚偽の報告を行い、私用で職場を離れた事実が判明したときは、その時間を労働時間から除外するとともに、懲戒処分を行う

なお、「明らかに会社の指揮監督下から離脱している場合」とは、①会社の承認を得た私用時間②交通違反など路上で取り調べられている時間③仕事の途中で仕事と無関係で普通なら許容できないような私用行為のためにサボっている時間、などのことを指します。

 

これらを考慮せずに、いつもよりも遅く帰社してきたときは社員の私用やサボリ、と一方的に決めつけて、そうではない証明をする責任を社員に押し付けることは許されません。遅くなった理由とその証明が社員側で合理的にできるなら、原則として帰社するまでのすべての時間を労働時間として取り扱い、明らかに会社の指揮監督下から離脱している事実を会社が立証できる場合に限って、労働時間にカウントしないことにしなければいけないということです。

 

**

最近では、しとしとといった降り方ではなくドーッとすごい雨、いわゆるゲリラ豪雨にあうこともよくあります。その影響で、高速道路などが通行止めになることもあるでしょう。

責任をもって商品を安全に顧客のもとへ届けることを心がけた結果、思わぬ時間を要することもあるかもしれません。

 

法律的な扱いは以上のようになりますが、普段から社員の仕事ぶりを気にかけ、社員の安全のためにも配達ルートの状況を確認しておくことが、人材マネジメント上のポイントになると思います。

上司が気にかけていることがわかれば、そうそう仕事を途中で放棄しようという気も起らないはずです。

 

もし、いつもの行動パターンと違うことがあれば、事情をしっかりきいて冷静な判断を行いたいですね。

社労士事務所Extension 代表・社会保険労務士 高島あゆみ

■この記事を書いた人■

社労士事務所Extension代表・社会保険労務士 高島あゆみ

「互いを磨きあう仲間に囲まれ、伸び伸び成長できる環境で、100%自分のチカラを発揮する」職場づくり・働き方をサポートするため、社会保険労務士になる。150社の就業規則を見る中に、伸びる会社と伸びない会社の就業規則には違いがあることを発見し、「社員が動く就業規則の作り方」を体系化。クライアント企業からは積極的に挑戦する社員が増えたと好評を得ている。

≫詳しいプロフィールはこちらから

伸びる会社の就業規則作成コンサルティング。ノートパソコン、スマートフォン、ボールペン2本、ピンク色の付箋
社員を伸ばす人事制度構築コンサルティング。パソコンに集中して打ち込む社員。
無料コンテンツ。デスク上にコーヒーカップと文房具。
社労士事務所Extension 代表・社会保険労務士 高島あゆみへのご依頼はこちらから